ロヒンギャ難民問題では各国から批判を浴びたが…

国の近代化を推し進めてきたアウンサンスーチー氏だが、対外政策では2016年以降に起きた「世界最悪の人道危機」ともいわれるロヒンギャ族への人権侵害疑惑がある。

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これは、ミャンマー西部のラカイン州に住むイスラム系の少数民族であるロヒンギャ族に対して、ミャンマー軍が過激派掃討作戦を口実に攻撃。この際、アウンサンスーチー氏は、ロヒンギャ族の排除に及んだ国軍の動きを黙認してしまったことで、特に欧米社会から大きな反発を呼んだ。

アウンサンスーチー氏に授与されたノーベル賞は留保されているものの、複数の名誉市民賞が剥奪される事態となっている。

それでもナインさんをはじめ、ミャンマー国内で彼女の支持は圧倒的に高い。今回のクーデターの勃発で、国民のほとんどは「軍政下の暗黒の時代への逆戻り」を危惧し、必死に「拘束されているアウンサンスーチー氏らの解放」「軍事独裁政治の消滅」を訴えている。

2万3000人超の受刑者を次々と釈放

そんななか軍部は12日、刑務所に収容していた受刑者2万3314人に恩赦を与え、次々に釈放した。対象者について詳しい説明はないが、デモ隊の中に受刑者を送り込み、混乱を引き起こして市民の逮捕や投獄といった強権を発動する恐れも指摘されている。ナインさんは、国軍が市民の自由を脅かしている現状について「問題は複雑で、国内では解決できない状況」と訴えている。

クーデターの発生を受け、各国はアウンサンスーチー氏ら、国軍に捕まえられた人たちの解放を求めているが、「国軍はそうした訴えを全く気にせず独裁政治を続けている。国際社会は経済制裁だけではなく、もっと強い方法で解決してほしい」(ナインさん)

そうした中、ジョー・バイデン米大統領は2月10日、ミャンマーで権限を掌握した国軍幹部らに制裁を科す大統領令を承認した。国軍への制裁措置として、「強力な禁輸措置も実施、ミャンマー政府を利する米国国内の資産を凍結する」としており、アメリカの介入による国民の期待は高まっている。