大会中止か、それともしないのか?
7月23日の東京オリンピック開幕まであと半年を切った。新型コロナの感染拡大による経済の悪化に加え、患者対応で医療機関は崩壊の危機にある。
年明けに共同通信が行った世論調査によると「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%で、7月開催への反対意見は全体の80.1%に達した。「五輪などやるなら、その予算をコロナ対策に」と訴える声は日に日に増している、というのが現状だろう。
年が明けてから、五輪の中止、あるいは延期の方向を示す外国メディアの報道がちらほらと聞こえてくるようになった。そんな中、大きな衝撃を与えたのは1月21日、英国の老舗新聞タイムズによる「連立与党幹部の話として、大会を中止せざるを得ないと非公式に結論」という報道だった。与党内の誰かが喋ったとされたことから、東京都はもとより、政府高官が「誤報だ」と火消しに走る、という異例の事態となったのは記憶に新しい。
ところが、組織委員会の森喜朗会長は1月28日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とのテレビ電話会議の際、「誰一人として反対意見はなかった」とバッハ氏の発言を紹介。開催に向けて引き続き準備を進めると改めて意欲を示している。
IOCら五輪関係者はいったいどのようなシナリオを用意しているのか。五輪ロンドン大会の開催をきっかけに、各国の競技関係者に接触する機会を持つようになった筆者が現地での取材をもとに考察したい。
開催に立ちはだかる「3つの大問題」
言うまでもなく、五輪開催にはいくつかの高いハードルがある。その中でも大きく3つの問題に分けられるだろう。
まず1つは、五輪前の最終予選が延期に追い込まれていることだ。例えば水泳アーティスティックスイミング(AS、旧名シンクロナイズドスイミング)の五輪本大会に向けた最終予選は3月初旬の東京開催を断念、5月に延期されることが決まった。一部の代表チームは最終予選に向けた事前キャンプのため、2月中旬の日本入国を目指していたが、大会延期に合わせてこちらもキャンセルとなった。
組織委の発表によると、海外から各国の代表選手が訪日し、五輪最終予選を戦うものとしては、4月中旬に水泳のダイビング(飛び込み)競技の大会が組まれている。ただ、変異株の市中感染が疑われる状況で、選手の日本入国は果たして許されるべきことなのだろうか。
日本の外国人入国にかかる水際対策は「水漏れ」と揶揄されているが、入国にはそれなりの制限がかかっている。代表選手であろうとも日本へのビザなし渡航はできず、事前に各国にある日本大使館等でビザ取得が求められる。