国連機関のお墨付きと保険金の存在

五輪関係者が開催に自信を見せる理由はまだある。IOCは、五輪中止を判断するには国際連合か国際保健機関(WHO)の意見を参考にする考えを明らかにしているが、逆に言えば国連機関からの正式な勧告などがない限り、開催する方針は変わらないとも読める。

フィナンシャルタイムズ(FT)は、東京駐在の五輪グローバルスポンサー2社のアドバイザーの話として「IOCがもし東京五輪を取りやめるなら、国連かWHOに正式な勧告を出すよう特別な要請を行うだろう」とした上で、「こうした勧告があれば、五輪がキャンセルになった際、IOCが取り損なう放送権収入は保険金で補塡ほてんされるほか、開催都市の東京都もIOCへのキャンセル料の支払いを逃れられるだろう」と報道。

このアドバイザー氏の意見として「こうした背景から、IOCも東京都もこうした機関からの正式勧告が出るまで中止を言い出すわけがない」と伝えている。

保険契約を取り巻く実態は1月28日、報道各社が保険ブローカーの見解として一斉に報じた。それによると「IOCは夏季五輪に約8億ドル(840億円)、東京五輪組織委は6億5000万ドル(680億円)の保険をかけていると推定」とあり、中止となっても保険金による補塡はあるようだ。しかし、昨年12月に発表された組織委の予算総額は1兆6440億円に達しており、保険金が出ても10%に満たない。

3月中旬までに「最終決断」か

「そこまでしてでも五輪をやるのか?」といったような想定を述べたが、とはいえ、中止か開催かの決断はいずれ必要だ。

先のFT紙は、東京に駐在する外交官らの話として「自国の政府に、選手遠征のための予算請求を組める日程的限界は3月末まで」と伝えた。

大会前の大イベントと目される聖火リレーが開始されるのは3月25日だ。昨年は、聖火そのものが日本に到着したものの、リレーが動き出す直前で延期が決まった。ちなみに、今年の聖火リレー開始より前に、国内での五輪最終予選の実施予定は組まれていない。

こうした状況からみて、中止なのか、このまま開催なのかの決断時期は3月中旬ごろだろうか。

国内の新型コロナ感染は収束のメドが立っていない上、医療崩壊の懸念も目前の問題として解決が求められている。橋本聖子五輪相は大会期間中に「1万人の医療従事者に交代で従事してもらう」という案も示しているが、目下の状況では国民にも関係者にもこうした案に対するコンセンサスを得るのは難しい。

日本のみならず、世界各国の人々が目前の生活もままならない状況にある中、観客と選手両方が納得する結論をIOCは出せるのか。デッドラインはすぐそこまで迫っている。

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