その上、選手らの日本滞在中の行動は全てビザ取得時の事前申告通りにしか動けない格好となっており、観光や街歩きの禁止はもとより、宿泊施設から近所のコンビニに出かけることさえも不可、と厳しく規制されている。まるで見張り付きの行動が求められるほか、五輪本番では過去の大会のように開催都市での滞在を楽しんだり、自国の他の競技の選手を応援したりといった楽しみもないといわれている。

参加選手はまだ6割しか決まっていない

現在IOCが感染対策として提案しているプランでは、選手は自分の出場種目開催の5日前をメドに選手村に入り、出番が終わったら2~3日以内に退去が命じられるという。関係者はこうしたややこしいロジスティクスの問題への対策にも追われることになる。

選手の宿泊施設では警備員やバリケードを導入する構想もあり、計画上では「選手や関係者が日本の一般市民にウイルスをまき散らさない」という予防策が採られている。これでもなお、「最大のパフォーマンスを五輪の場で出せ」と言われるのはとても酷なことに違いない。

2つ目は、国内の厳しいコロナ感染状況である。4月以降、五輪最終予選やプレ大会がいくつか予定されているが、感染状況次第では、またも延期や中止が起こり得る。いくら日本側がプランしても、国際競技連盟や参加国が難色を示しては実施が難しい。

プールを泳ぐ競泳選手たち
写真=iStock.com/ALEAIMAGE
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そしてもちろん、日本だけでなく、全世界のコロナウイルスの感染状況も気にしなくてはならない。IOCによると、現時点で、参加枠で選手が確定しているのは全体の61%ほどにすぎないという。全体の15%は競技ごとの世界ランキングで五輪参加枠が埋まるというが、残りの25%ほどはこれから選手選出が進められる。世界的に各競技で予選実施が止まっている中、向こう数カ月で決めるのは前途多難な課題と言える。

ワクチン接種は予定通り進むのか

3つ目の問題は、五輪開催に欠かせないワクチン接種だ。欧米先進国を中心に、早いところでは昨年末からすでに接種が始まっている。ただ、英国製のワクチンが欧州連合(EU)諸国に事前の契約通り届かなかった例もあり、各国とも予定通り接種が進むとは思えない。

IOCは1月26日、「出場選手や関係者に訪日前のワクチン接種を推奨する」と述べた。しかし、そもそもワクチンの健康上への影響が完全に分かっていないという事情もあり、こうした方針に異を唱える選手らも出てきている。また、そもそも7月までにワクチンが届かない国も途上国を中心に出てくる可能性が高い。