なぜ新型コロナウイルスの話題には賛否両論が巻き起こるのか。評論家の真鍋厚氏は「『賛否両論』の深層には、3つの対立軸が潜んでいると考えられる」という——。
マスクをする男女
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マスク着用一つとってみても、いくつもの分断が起こっている

1月16日の大学入学共通テストで「鼻出しマスク」をした受験生の成績が無効になったことが、SNS上で話題を集めました。この受験生はテスト終了後、トイレに約4時間閉じこもり、建造物不退去容疑で逮捕されています。

1月20日には、昨年9月に旅客機内でマスク着用を拒否するなどの騒動を起こした男性が、威力業務妨害などの疑いで逮捕されました。事件から4カ月後のタイミングであったことからさまざまな臆測が飛び交っています。

「ウレタンマスク警察」「不織布マスク警察」といわれる動きも目立ちます。テレビなどでウレタンマスクの感染防止効果が不織布マスクより低いと報じられたことから、自主的にマスクの種類を取り締まる人たちがいるのです。実際、病院や店舗などで「ウレタンマスクお断り」という場所もあるようです。

このように「マスク着用」だけでも、日本社会には深刻な分断が起きています。こうした分断の深層には、以下の3つの対立軸が潜んでいることが推測されます。

・コロナ否認とコロナフォビア(恐怖症)
・経済優先派と人命優先派
・ニューノーマルと反ニューノーマル

順に見ていきましょう。

さほど致死率が高くないウイルスこそ容易に感染爆発を起こす

まずコロナ否認とコロナフォビア(恐怖症)です。

「コロナはただの風邪」に過ぎず、マスコミと政治が危機をあおっている茶番劇であり、普段通りの生活をすれば良いと考え、マスク着用は不要で、リスクの高い健康弱者への配慮は軽視して構わないと主張する人々と、依然として「コロナは恐ろしい感染症」であるとの認識を持ち、ステイホームを基本としながら、感染症対策に従わない行為全般に強い嫌悪を覚え、感染することへの恐怖から法的規制すら主張する人々の対立です。

そもそも、このように人々を分断に追い込む新たな病原体によるパンデミックの危険性は、2018年にジョンズ・ホプキンス大学の報告書で予見されていました(“The Characteristics of Pandemic Pathogens”)。無症状者や風邪と似た症状が多い特性があり、さほど致死率が高くないものにこそ人々は油断し、容易に感染爆発を起こして健康弱者の死と重症化を招くと警鐘を鳴らしていました。