業界がすがる菅首相-二階幹事長のトップライン
壊滅的な業績悪化に見舞われている旅館やホテル、旅行会社、航空業界――。これら観光を巡る業界がすがるのが菅義偉首相-二階俊博自民党幹事長の、いわゆる「運輸・観光族」のトップラインだ。このうち、菅政権の「生みの親」とも言われる二階幹事長を頼る業界の思いは日に日に募る。
二階氏は全国5500社もの旅行業者を束ねる全国旅行業協会(ANTA)の会長を1990年から30年も務めている。昨年3月には新型コロナ感染で落ち込む旅行需要を喚起するためにANTAをはじめとする業界関係者が自民党の「観光立国調査会」で、観光業者の経営支援や観光需要の喚起策などを要望した。同調査会の最高顧問は二階氏だ。
この要望を受けた二階氏が政府に「命令に近い形で要望したい」と発言したことがGo To構想が始まったきっかけと言われる。同調査会は、最高顧問の二階氏の下に、会長は二階氏の最側近で知られる林幹雄幹事長代理、事務局長は二階氏と同じ和歌山県選出の鶴保庸介参院議員が務め、二階氏周辺がトップを独占する「観光族議員」の総本山だ。
自民党観光立国調査会と「ツーリズム産業共同提案体」の関係
さらにANTAに加え、日本旅行業協会(JATA)、日本観光振興協会という3つの社団法人と、JTB、KNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズの大手旅行会社4社など合計14団体から構成される「ツーリズム産業共同提案体」という団体がある。
この団体がコロナ対策費の倍となる総額1.3兆円にも上るGo Toトラベルキャンペーンの予算のうち、1895億円分の事業を受託している。「この共同提案体は二階氏がトップの自民党観光立国調査会に長年、献金している」(旅行業界関係者)という。
二階氏は運輸大臣を務め、観光行政に強い影響力を持つことで知られる。
JR東日本OBによれば、菅首相も「中央政界に出るときに国鉄分割民営化で運輸事務次官からJR東日本の初代社長に転じた住田正二氏や、その後を継ぎ国鉄改革三羽烏の一人であった松田昌士元会長・社長に世話になったことが知られる。JR東日本の職域団体である『東日本ときわ会』が職員を総動員し、菅氏の選挙の実働部隊となったという深い関係がある」のだという。