日本の2倍、子育てにお金を出しているフランス

「お金がかかりすぎるから、子どもを持てない」日本と、「お金はかかるが、子どもを諦めるほどではない」フランス。両者の違いを考える際、象徴的なデータがある。子育て支援まわりの政策に国が注ぐ支出の、対GDPの割合だ。平たく言うと「各国が子育て世帯のために、どれだけ国としてお金を使っているか」を示す指標である。

OECDがまとめた2015年度のデータ(OECDファミリーデータベース)では、フランスは3.68%、日本は1.61%。割合にしてフランスは日本の2倍以上、子育て支援にお金を出しており、これはOECD加盟32カ国中でもトップだ。

しかもフランスには、国が「子育て支援にお金を使うために」と作った専用組織が存在する。『家族手当金庫 Caisse d'Allocations Familiales』、通称CAF(カフ)と呼ばれる公的機関だ。政府や省庁から独立し、かつ彼らと連携して、フランスの家族の実態を把握し、必要を分析し、お金の使い方を検討する。国家戦略を司るトップオフィスをパリに、給付手続きを行う独自の地方窓口をフランス全土101県に展開し、3万人以上のスタッフが働く巨大組織である。手掛ける支出額は年間10兆円を超える。

フランスの子育て支援の国策は3本柱で、保育所や学童クラブなど「育児支援サービスの提供」、手当金など「公的補助金の提供」、そして子育ての必要経費を減税で補塡ほてんする「税制対策」に分かれる。家族手当金庫が担当するのは、このうち2本の「育児支援サービス」と「公的補助金」の提供だ。

子ども手当が「10種類」もある

先進国で最も子育て支援にお金を使っているフランスでは、その仕組みにも大きな特徴がある。全国共通の手当金の種類が多く、バラエティ豊富なことだ。子どもの年齢や世帯内の子どもの数などの世帯タイプ別、保育費援助や新学期援助など目的別に、「子ども一人頭の手当」だけでも10種類に上る。うち4種類は給付条件に所得上限があるが、その他の6種類は高所得世帯でも受給できる立て付けだ。受給に親の婚姻関係は問われず、事実婚でも扱いは変わらない。そしてこの10種類の子ども手当とは別に、ひとり親への手当や障害児療育手当、住宅手当があるのだそうだ。

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「フランスでは、子育ての経済的負担を減らすために、国が家族を助けるのが当然と考えられています。そしてその家族はどんな形でもいいんです。支援を受けるにあたり、『家族とはこうあるべき』という倫理的な条件付けはない。子どもを育てるためにお金がかかる事実は、家族の形にかかわらず、変わりませんから」

家族手当金庫のトップ組織、全国家族手当金庫(CNAF)の国際部長フレデリック・ルプランスさんは言う。諸外国と情報交換し、いい制度があればフランスに取り入れるべく政府に進言する部署だ。昨今は養育費を政府機関が立て替え・代理徴収するカナダのシステムを参考に、家族手当金庫の新制度として施行したそうだ。