イノベーティブな仕事が減少

別の例を挙げてみましょう。デヴィッド・グレーバーは『ブルシット・ジョブ』の前に、『官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』(以文社)という本を刊行しています。

これは『ブルシット・ジョブ』の姉妹本というべきもので、「自由競争の市場に基づいた資本主義の下であれば、もっとテクノロジーの進歩が加速していいはずなのに、思った以上に進んでいないのはなぜか?」という問いに基づいて書かれた書物です。

それは新自由主義が進めば進むほど、逆に規制が強まり(近年のコンプライアンス問題などを見るとわかりやすいかもしれません)、結果として純粋なテクノロジーの進展が抑止されているというものでした。

自由経済に基づいたグローバル化が進めば進むほど、特許など知的財産権を守るための制度作りが必要となり、手続きはより増え続けます。結果、書類作成(ペーパーワーク)が仕事の大半を占めて、イノベーティヴな仕事は減少していき、あたかも「官僚制」に代表されるような非効率な状態が、新自由主義下で広がっているのではないか、と言うのです。

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無意味で不要不急な仕事が増殖

管理職という点から言えば、グレーバーは同じく『官僚制のユートピア』のなかで、やはり『ブルシット・ジョブ』と似たような指摘をしています。

「すなわち、ここ数十年、一見して無意味で不要不急の仕事――戦略ヴィジョン・コーディネーター、人的資源コンサルタント、リーガル・アナリストなどなどの『ブルシット・ジョブ』――が、これらの職に就いている人間ですら事業にはなんの貢献もしていないと日頃ひそかに考えているにもかかわらず、増殖しつづけている」というような現象が起きていると言うのです。

その例として、グレーバーはフランスのマルセイユ近郊にある製茶工場で起こったことを紹介しています。