「犯罪には全く加担していない」と開き直る小枝至氏

この志賀・西川両氏の背後にはもう一人、大物が控える。かつてゴーン氏とともに共同会長をしていた小枝至氏だ。

小枝氏も1月13日の公判に出席、証言した。

志賀氏は「ゴーンの振る舞いを許した日産の責任も大きい」「特に私は10年間、代表取締役の立場にあり、コーポレートガバナンス(企業統治)の担当役員だった。ガバナンスが機能していないと認識しながら改善できなかったことは、痛恨の極みで深く反省している」などと反省の念を示した。

一方、小枝氏は「ゴーンが起こしてしまったことを処理しただけで、犯罪には全く加担していない」と開き直りに近い発言に終始した。

小枝氏も西川氏と同様、東大卒だ。事務系の西川氏に対し、小枝氏は生産から経営企画、さらには購買部門など幅広く経営の中枢を担ってきた。久米豊氏(元社長)や辻義文氏、ルノーとの提携を決めた元社長の塙義一氏にうまく取り入り、ルノーとの提携後に退いた塙氏の後を継いで、日産生え抜きの中でトップになった。

そのため「日産の内部をあまり知らないゴーンから人事の相談を受け、実際に差配するのは小枝氏だった」(日産OB)とも言われてきた。

「報酬過少記載事件」は小枝氏が主導したとの見方も

久米、辻、塙氏の3代とも東大卒。「小枝氏は東大工学部の先輩だった久米、辻両氏にはかわいがられていた」(日産OB)。「勝ち馬に乗る機を見るに敏の立ち回りのうまさは天才的だ」(ほかの日産OB)と皮肉交じりの評価が聞こえてくる。

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小枝氏も同じ東大卒の西川氏に目をかけていたが、「やはり傍流からゴーンに寄り添い、マスコミ受けのいい志賀氏の存在を苦々しく思っていた」(日産幹部)という。

小枝氏は、志賀氏がようやく副会長に退くと、西川氏を使って自分の息のかかった幹部を経営中枢に引き上げた。西川氏がCOOから社長に昇格すると、山内康宏氏をCOOに据えるなど、西川氏に次ぐ地位に押し上げた。いずれも、小枝氏が長く在籍してきた、日産で最も発言権のある購買部門の出身だ。

ゴーン元会長への目配りも忘れない。ゴーン元会長の役員報酬を有価証券報告書に開示しなかった金融商品取引法違反の問題も小枝氏が主導したとの見方がある。