オバマ政権の政策から漏れたプアホワイトたち
トランプ政権の前、アメリカは民主党のオバマ政権でした。それ以前から世界はグローバル化とIT化が進み、格差が拡大していましたが、そこにアメリカ初の黒人大統領バラク・オバマがあらわれ、マイノリティや多文化主義に肩入れした政策を実施しました。
すると、どうなったか……アメリカ社会で格差に苦しみながら、政策的に救われない人々が生まれてしまいました。それが「プアホワイト」、つまり「貧困にあえぐ白人労働者層」です。
彼らの多くは、近代化から取り残された工業地帯、いわゆる「ラストベルト」(錆びついた工業地帯)の工場労働者です。場所はアメリカ中西部の五大湖周辺。都市部から離れた地域が多いため、考え方が保守的です。しかも彼らは、グローバリズムと多文化主義によって増加した移民により、雇用が圧迫されています。
本来であれば、こういう人たちは、リベラルにより救われるべき人々です。しかし、彼らはオバマ政権が示した「“進歩的な”救済プログラム」から漏れてしまった。いくら救いを求めても、その声は遠く離れたワシントンにいる民主党のエリートたちには届きません。
そこに救いの手を差し伸べたのが、トランプだったのです。彼はオバマ政権下で「声なき声」にされてしまっていたプアホワイトを味方につけ、大方の予想に反し、2016年の大統領選に勝利しました。
今言っておきたいことは、アメリカには都市部とは全然違った「地方の声」があり、都市部を拠点とする政府や大手メディアは、ともすればその大きさとエネルギーを読み違えてしまうこともあるということです。
2016年のヒラリー・クリントンは、それに足元をすくわれたのです。勝利したトランプ大統領については、次回くわしくお話させていただきます。