「10回×1セット」の小さな挑戦でもいい

限界まで追い込んで体力を使い果たしながらも、言いようのない爽快感を覚えたことのある人もいるでしょう。この爽快感も、ドーパミンの働きによるものです。

これらの快感を伴って生まれるモチベーションは、過負荷の原則に沿って「常に追い込み続けること」への挑戦を後押ししてくれます。「今日は3セットできたから、明日はもう1セット」といった具合に負荷を上げながら、着実に達成していくプロセスは、成功体験の積み重ねとなり自分への自信にもつながります。さらに、ドーパミンは新たなものへの探究心や動機づけのスイッチにもなってくれます。

このように、ドーパミンは挑戦力を養うにはいいことずくめです。しかも「10回×1セット」といった小さな挑戦でも、達成感を味わえば分泌されます。レジスタンス・トレーニングで「挑戦→達成」のサイクルを習慣化すれば、未知なる世界への挑戦でも、厭わず向かえる肉体と脳が育めるのです。

トレーニングは「大きな筋肉から」が鉄則

筋トレは、「大きな筋肉から小さな筋肉へ」の順序で行うのが基本です。

吉田輝幸『6つの力を養い、理想の働き方を叶えるトレーニング』(幻冬舎)

筋肉の大きさと、使うエネルギー量は比例しています。大きな筋肉を動かすには大きなエネルギーが必要になるため、仮に小さな筋肉からトレーニングをはじめてしまうと、大きな筋肉を鍛えるときには十分なエネルギーが残っていない可能性があるからです。

また、大きな筋肉のトレーニングは、複数の関節や筋肉を使うことが多く、大きな筋肉のトレーニングからはじめれば、間接的に小さな筋肉も鍛えることになります。ダイエットの点からも、大きな筋肉を優先的に鍛えることは、基礎代謝のアップにつながります。

日常のさまざまな動作も、大きな筋肉を使って動くのが原則です。

人間の筋肉は、身体の中心部にあるものが大きくて、手足の指など末端にいくほど細く小さくなっています。ですから本来は高い棚の上のものを取るときも、腕ではなく背中を使って腕を動かすのが正しい動作です。歩いたり走ったりする際にも、股関節を動かして歩くのが本来の動作で、中心から外側へと動きを伝えて動かします。

私は以前からこれを、企業経営にたとえています。

全身の筋肉のなかでも身体の中央にあって、太い幹の役割をする体幹が、経営トップ。特に、腹筋が社長です。そこから末端にいくほど、部長、課長と役職や権限が下がっていきます。経営では、トップが明確な意思決定を下して経営責任も負い、末端が必要以上の権限を持ったり、能力を大幅に超える仕事を強いられたりすることはありません。