構造が理解できればものごとの本質がつかめる

【演習問題】
先ほどご紹介した稲盛和夫氏の名言を使って、あなたなりの名言をひとつ作ってみてください。

このエクササイズの意図を少し補足します。先ほどの名言には構造がありました。ここでは、それと同じ構造をしている別のものを考えてみるのです。つまりアナロジーを使うエクササイズです。アナロジーとは類推るいすいまたは類比るいひとも呼ばれ、特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程のことを呼びます。難しく考える必要はなく、できるだけ楽しむことが大切です。

あらためて、先ほどの構造を思い出します(図表2参照)。書かれているアルファベットを別の具体的な何かにできれば完了です。ここは想像力を働かせます。このプロセスがアナロジーの楽しいところです。

わかりやすいテーマとして、仕事がデキる人とデキない人という対比を考えてみます。まさに真逆の存在です。そしてそこに「忙しい」と「暇」という概念を当てはめます(図表3を参照)。

仕事がデキない人は(実際は)暇なときに忙しそうにしている。忙しいときに忙しそうにしている人は普通の人。

忙しいはずなのにそう見えない、つまり暇そうに見える人ほどなぜか仕事がデキる。もちろんこれが絶対とは申しませんが、ひとつの傾向として頷く方も多いのではないでしょうか。

「デキない奴は暇なときに忙しそうにする。普通の奴は忙しいときに忙しそうにする。デキる奴は忙しいときに暇そうにする」

稲盛氏の言葉と比較してしまうと明らかに見劣りしてしまいますが、本質は表現できているのではと自己評価しています。あなたならこの構造からどんな名言を作りますか。

たとえ話で構造的にものごとを見る力を鍛える

本稿まとめとして、習慣の話をします。

深沢真太郎『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)

「感覚として掴むことが大事」

私が著作やセミナーなどで多用する表現です。構造化は理屈で理解するものではなく、どんな場面でも完璧にできるような方法論も存在しないテーマです。つまり、いかにあなたが普段からトレーニング(に近い行為)をしているかがその定着度を決めます。

そこで私はあなたにこのような提案をします。

「普段から、たとえ話を考えるクセをつけてください」

たとえ話とは、いわゆる比喩と思っていただいて結構です。居酒屋の商売はプリンターのビジネスモデルと構造が似ているという話題を思い出してください。これはすなわち、「居酒屋の飲み物は、プリンターのインクのようなものである」という比喩が作れることを意味します。つまり、「AはBのようなものである」というたとえ話を考えることが、すなわち構造化するプロセスを練習することになるのです。

実際に私が頭の中で構造化を試みた結果をふたつほどご紹介します。あくまで遊び感覚でやってみた結果です。

恋の構造は炭のそれに似ています。
→「恋は炭のようなものである」

離婚は退職と構造が似ている
→「離婚とは退職するようなものである」

いったいどのような構造化をしたのか、あなたもぜひ考えてみてください。

このような類の思考トレーニングは、すぐあなたの仕事に直接的に役立つかどうかはわかりません。しかし役立つかどうかで考えてしまうとそれは習慣として定着しません。ゲーム感覚で、遊びとして捉えてやってみることがコツです。ちょっと時間が空いたときにコーヒーを相棒にして。あるいは通勤電車の中でのルーティーンに。あなたにとって無理のない方法で、ぜひ習慣にしてください。

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