大げんかのあと、手紙で不貞をカミングアウト

山本さんは、セックスレス解消を諦めなかった。いきなりセックスするのはハードルが高いだろうと、パートナーシップの本を読み、カウンセラーに相談して、自分の行動を見直した。スキンシップを重ね、会話の数を増やし、夫が喜ぶことを意識した。

「ものすごく恥ずかしいですけど、『キスしてほしい』『かわいいって言ってほしい』とストレートに気持ちを言うようにもしました。気持ちをため込んじゃうと、いじけた態度やこじらせた言い方になっちゃうので。一応、夫はそのときはやってくれるんですけど、継続しないんですよね。うまくあしらわれて、かわされている感じがしました」

セックスレスは好転せず、それどころか夫婦関係は悪化していく。山本さんが主婦業と並行して仕事を始めるとけんかが増えた。『誰のおかげで生活できてるんだ』とモラハラ発言をする夫に恐怖を感じ、次第に愛情もうせていき、離婚を考えるようになる。そして、夫と大げんかしたとき、山本さんは再び手紙を書いた。

「あなたがセックスしてくれないから、他の人としました。でも、あなたも私も悪くないと思います。離婚しましょう」

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離婚し小学2年生の子供を育てるシングルマザーに

手紙を読んで激昂した夫は、山本さんの両親に連絡。両親からも非難され、「稼ぎもほぼないし、旦那さんの元にいさせてもらいなさい」と離婚を反対された。だが、山本さんは弁護士に「セックスレスは正当な離婚理由にならない」と言われるまで、自分の過ちに無自覚だった。

「夫のことが好きで、ずっとしたいと言ってきた。それを向き合ってくれないゆえの不貞だから、悪いことじゃない。彼も彼なりに葛藤していたから悪くない。だからどっちも悪くないっていうのが答えになるんじゃないかと思ったんです」

そうはいかない。セックスレスの夫ではなく、不貞行為をした山本さんが法的に問題となる。夫が同意しない限り離婚できない立場に追いやられ、夫は離婚を拒んだため、事態はこじれた。「離婚してやる!」とたんかを切ったつもりが、墓穴を掘ってしまったのだ。

それでも、この生活を終わらせたい山本さんは夫を説得。ほぼ自身の財産がない中、車を売って約30万円の慰謝料を支払い、離婚にこぎつけた。こうして山本さんは現在、小学2年生の子供を育てるシングルマザーとなったのだ。

「離婚が決まって子供と引っ越しました。親に離婚を反対されていたので保証人もいなかったんですけど、不動産屋に頭を下げて、引っ越し資金は旦那からの借金と息子のお年玉をこっそり使いました。今、息子への返済をしているところなんですよ。冷蔵庫も何もなかったけど、友達がくれたりしてある程度そろったんです。カーテンは今もないんですけどね。でも、意外となんとかなるんですよ」

晴れ晴れした表情を見せる山本さん。しかし、現実的に、今後の生活はどうする予定なのだろうか。