コロナで瀕死になった観光業にチャンスはあるか

2020年はコロナのパンデミックで世界各国が入国を制限したことで、航空業界や観光業界は最大級の打撃を受け、大きく業績が落ち込むことは避けられなかった。

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小さな航空会社の何社かはすでに倒産してしまったほどだ。しかし、私は中国をはじめとするアジアの観光業の未来について長期的にはポジティブに考えている。

21世紀はアジアの世紀だと何度も述べているが、それは数字にも表れている。2018年の世界全体の国際観光収入は対前年比約5%増だったが、アジア・太平洋は世界平均を上回る9%増と著しく伸びている。

コロナ禍の前までは日本を訪れる旅行者も増えていたが、その大半は中国人だ。そして38度線が開いたときの朝鮮半島の観光についても明るいと考える。

日本人はずいぶん昔から海外旅行をしてきたが、中国人は何十年も自由な海外渡航が許されなかった。しかし最近になってパスポートや観光ビザの取得が容易になった。何と言っても中国の人口は14億人もいて、彼らは世界を、そして自分の国の他の都市を見に行きたくてたまらないのだ。

人は海外旅行を一度でも経験すると、「もっと違う国を見てみたい」と思う欲求を抑えられなくなる。私は二度世界一周をして、その後も年間何十回も海外に行き続けてきたが、まったく飽きることはない。77歳になった今でも、シンガポールのチャンギ空港に向かうときはいつもワクワクする。

朝鮮半島は世界的に有名な観光地になる

韓国はこれまで「外国人が行ってみたい場所」として注目を集めたことはなかった。しかし近い将来38度線が開くと、「北朝鮮に自由旅行で最初に行った」と言い張りたい冒険心の強い観光客が集まるだろう。そして、韓国に着いてみると素晴らしい建造物や自然を目の当たりにすることになる。朝鮮半島の豊かな食文化に感動する人もたくさん出てくるだろう(私は個人的には朝鮮料理があまり好きな方ではないのだが、好きな人はたくさんいると思う)。そうなると、朝鮮半島は向こう20年間、世界的に有名な観光地となるはずだ。

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この半島はあまり面積が大きくないので、観光客は一度の旅行で北朝鮮にも韓国にも両方行くだろう。そうなると朝鮮半島と周辺の航空会社、ホテル業などは大成功を収めると予想する。私は大韓航空株を多少持っている。実はいつも乗ると不愉快な思いをするから、個人的には大嫌いなのだが、未来を考えると投資先としては有望だと考えている。

ちなみに普段であれば年間何十回も飛行機を利用する私が今大好きな航空会社は、日本の全日空や、エミレーツ航空など中東系の航空会社だ。特に中東系の航空会社は昨今大量の資金を投じており、サービスが格段によくなった。機内スタッフたちも仕事を楽しんでいるのがうかがえるので有望だと感じている。いつも仕事をしていて惨めそうなアメリカの航空会社のスタッフたちとも大違いだ。

最近は航空会社が人ではなく貨物を運んでいると聞く。しかし少しずつ人を乗せた飛行機は飛ぶようになっているし、コロナの治療薬やワクチンができて世界に安心感が広がれば、観光業はこれまで続いてきた長期成長トレンドに戻るはずだ。2018年から2038年で世界の航空旅客需要は2.3倍になると予測されていた。世界全体の人口が増える中で旅行者が減ることはなく、観光業界の成長が続くことを確信している。