非出走の6人を決めるのは大みそかか元日「1年で一番きつい日です」

1月2、3日の本選に先立って、12月29日に「区間エントリー」が行われる。レースを大きく動かす他大の有力選手の区間を気にしながら、各校は自分たちのオーダーを決定する。1~10区までに選手名を入れるが、当日変更で補欠登録の選手を最大4人(今回は6人)入れることができる。

ライバル校にギリギリまで作戦を知らせない目的と、リスクマネジメントのために、この時点でベストオーダーを入れる大学はほとんどない。駆け引きをするのだ。

リスクマネジメントでいうと、予定の10人全員をエントリーすると、風邪や故障など当日変更を余儀なくされた場合に困ることがある。2区や5区など主要区間の選手にアクシデントがあっても対応できるように、エース区間を任せられる主力選手をあえて補欠登録しておくことが多い。

チーム内では当日変更される選手のことが事前に共有されても、チーム外の人間にはわからない。当日変更で外れる予定の選手たちは、家族が期待していることもあり、レース当日を複雑な思いで迎えることになる。

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エントリーの16人には選ばれたものの10人の出走メンバーからは外れる選手はもちろんつらいが、それを決断する指揮官もつらい。東海大・両角速駅伝監督は、「外すことを告げたときに涙する者もいて、適切な言葉が出てこないのが悩ましいところなんです」と話している。國學院大・前田康弘監督も、「外す選手とは1対1で話をします。だいたい大みそかか元日ですけど、1年で一番きつい日です」というほどだ。

出走する21大学210人を、補欠・裏方の1000人が支えている

補欠・裏方に回る非レギュラー部員は、おそらく1000人以上。

筆者は1年次に箱根駅伝10区を走った後、故障で走れない日々が続いた。2年時の後半から左脚の付け根が張るようになり、左脚をまっすぐ出せなくなった。スポーツ整形外科を中心にいくつもの病院をまわり、評判のいい治療院にもいくつか通った。しかし、脚は元に戻ることはなかった。寮のベッドのなかで声を押し殺して、何度も号泣した。いまでもそのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。

箱根駅伝は出走するのは21大学(関東学生連合含む)の210人だけではない。

補欠・裏方に回る非レギュラー部員は、おそらく1000人以上。その走らざる者たちにもそれぞれストーリーがある。スポットが当たらないだけだ。そのことを理解すると、1月3日のゴールシーンでは特別な感慨がわいてくるのではないか。走らざる者たちのためにも、選ばれし者たちには悔いのない走りをしてほしいと思う。

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