アーティストとアントレプレナーの共通点

過去のイノベーションを調べてみれば、核となるアイデアの発芽したポイントに、経済合理性を超えた「衝動」が必ずといってよいほどに観察されることが確認できます。

山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)

大雨のデリー郊外で、幼い子供二人を伴った家族がバイクに乗って移動している様を見て、「この人たちにも買える安価で安全な自動車が必要だ」と感じたラタン・タタ。

凍てつく真冬の夜に、屋台のラーメン食べたさに子供を連れて長い列に震えながら並ぶ人たちを見て「自宅で気軽に美味しいラーメンを食べさせてあげたい」と感じた安藤百福。

ゼロックスのパロアルト研究所で「コンピューターの未来」を示唆するデモンストレーションに接して「これは革命だ! このスゴさがわからないのか!」と叫び続けたスティーブ・ジョブズ。

20世紀前半、しばしば世界中で大流行して多くの子供の命を奪ったポリオを根絶するべく、ワクチンの開発に生涯を捧げながら、特許を申請せず、ワクチンの普及を優先したジョナス・ソーク。

このような「経済合理性を超えた衝動」は、アーティストの活動においてしばしば見られるものですが、同様の心性がアントレプレナーにもしばしば観察されるのです。

現在、ビジネスの文脈においてしばしば議論の俎上に上る、いわゆる「アート思考」とビジネスとの結節点はここにあります。高原社会において、必ずしも経済合理性が担保されていない「残存した問題」を解決するためには、アーティストと同様の心性がビジネスパーソンにも求められる、ということです。

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