「エクセルができます」より「トイレを直せます」のほうが価値がある

では、いまの時代にどのような労働力を集めれば良いのかというと、1つ目は社会的なコンテクストからの逆算である。

事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)

例えば、「女性の社外取締役を増やそう」という動きや、コーポレートガバナンスの強化において、「常勤監査役が不足している」という社会背景などは、どのような人材が不足しているのかを明確に示していることがわかるだろう。

ホワイトカラー1つとっても、このような特定のニーズにおけるプロフェッショナル人材を集めて派遣するビジネスがあれば、今後伸びる可能性は高いと考えられる。

もう1つは、マクロの人口動態からの逆算である。日本の人口動態は今後ますます逆ピラミッドになっていくため、一生懸命汗をかく必要のある労働スキルを持った人材が、今後重宝される社会になる。

パソナがこれまでやってきた中途半端なホワイトカラー人材はますます余るが、反対に水道工事や大工など、肉体労働を伴う労働スキルの方が、労働人口が減っていく中で希少化し、重宝されるのである。

ベビーシッターを派遣する「キッズライン」は、登録したシッターがわいせつ事件を起こすなどの大きな問題もあったが、ベビージッターという特定の、肉体労働性のある専門スキルを持ったプロフェッショナルを集めて急成長した。

この事例も、上記のようなブルーカラー的プロフェッショナル人材の取りまとめという文脈に含めることができるだろう。

冷静に考えてみると、一応エクセルが使えます、とりあえずVLOOKUPが使えますというレベルのホワイトカラー労働者よりも、トイレを直すことができるスキルのほうが遥かに希少なのである。

そして、その結果として値段もつきやすいのは、少し考えて見ればわかるだろう。これまでは肉体労働は賤業として安く見積もられていたが、地位の逆転現象が起きる日は近い。

中途半端なサラリーマンより肉体労働のほうが食える時代が来る

正確に言えば、頭脳労働と肉体労働の二極化が進み、その中間に存在していたとりあえずVLOOKUPくらいは使えます的な、中途半端なホワイトカラー労働者は、自動化の波に取って代わられるのだ。

日本企業では、これまで、会議のための会議、その会議のための資料作り、といったような、企業の儲けとは全く何も関係のないような仕事が多すぎたのである。そして、このような仕事が、「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」により一掃されることはほぼ疑いようがない。

その結果、これまで、適当な資料を作って何となく給料をもらっていた正社員は職にあぶれるような状態になり、頭脳労働と肉体労働の二極におけるプロフェッショナルだけが稼ぐことができる、そして稼げる人と稼げない人の明暗がますます分かれていく、厳しい時代になっていくだろう。

このような時代においてやるべきことは、まず、自分が「どのように会社に利益貢献しているのか、あるいはしていないのか」を分析することである。

そして、自分がもし会社の利益に対して貢献をしていないと自己認識するのであれば、少し資料を綺麗にするとか、エクセルの使い方の勉強をするというような、利益に対しての貢献が殆どないようなスキルの勉強をして自分の無能を解決しようとしても意味がないだろう。

拙著『金儲けのレシピ』にも書いたような「金儲けリテラシー」を養うことで、本質的にどうすれば会社の「金儲け」に貢献できるのかについて、頭に汗をかくべきだ。

そして、頭に汗をかく仕事が向いていないと考えるのであれば、むしろ、中途半端なホワイトカラー労働者の道をすっぱり諦めたほうがいい。

むしろ水道工事のような、肉体労働的な要素と専門知識をかけ合わせた仕事にキャリアを切り替え、1日に何件もトイレの詰まりを直すキャリアを選んだ方が確実に、そして長期的に金を稼ぐことができるだろう。

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