名前さえ伝わっていればチャンスはつかめる

その日、社長は夜9時に会社を出るということが分かっていたので、会社の裏口にスタンバイしました。変な営業マンが会社裏に張っていることがバレるとまずいので、裏口の裏手にあった森のような場所で、一人息を潜めます。

そんなところで社長が出てくるのを今か今かと待っていると、ゴルゴ13みたいな気分でした。裏口のドアと社長の車までの距離は10メートルほどしかありません。なので、このわずか10メートルが勝負。

裏口から出てくる社長を見つけた私は、森の中から社長めがけて猛ダッシュしました。森の奥から身長187センチのスーツを着た営業マンが突進してくるわけですから、社長の立場で見たらドン引きです。

「なんや、なんや」みたいな感じになっているところに、名刺を取り出して「私が宋です」とご挨拶をさせていただきました。

手紙を何十通も渡されているので、会社に証券会社の変な営業マンが来ていることは知っていたと思います。ただ、どんな顔してる奴なのか、っていうのは全然分からない。

はじめて「宋です」と言った時、私の顔と名刺を交互に五度見くらいしていました。そして「あ、お前か」と分かっていただけて、めちゃくちゃ驚かれました。

もちろん、相手は証券会社の若い営業マンだから、株を買ってもらいたいということは社長も分かっているはずです。社長は「もう今日は遅いから、明日会社に来い」と私に言いました。

やっと努力が実って、お客様になってもらえる。私は「よっしゃ~」とテンションが上がり、アメリカ大統領の送迎車を見送るホテルマンばりに、車に乗り込む社長を見送りました。

手を尽くせば世の中に会えない人はいない

家に帰ってからも、明日は5000万で提案しようか、それとも1億いこうかとプラスの妄想がどんどん湧き出てきます。もう明日の提案が楽しみで楽しみで仕方がなかった。

そして翌日、初めてその会社の社長室に通されました。ものすごく厳かな雰囲気の社長室です。そこで社長から開口一番に、

宋世羅『ヨイショする営業マンは全員アホ 1%だけが知っている禁断の法則』(飛鳥新社)

「悪い。投資には全然興味がないから、お前のお客さんにはなれない。申し訳ない」

と言われてしまいました。さらに

「代わりと言っちゃなんだが、お前、野村證券を辞めてうちに来ないか?」

と社長。そんな営業のサラリーマンをするより、うちの方がもっと面白いことできるぞ、と。いわゆる、逆営業をかけられたんですね。

私も一年目だったので、支店に戻って相談するみたいなことを考えられなかったので、社長の申し出は断ってしまったんですが、「世の中に会えない人はいない」ということを体感しました。私にとってはいい経験になったなと思っています。

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