日銀の「量的・質的金融緩和」がもたらした財政の弛緩

河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)

「やれることは何でもやる」。これはわが国でもかつて耳にしたことがあるフレーズだ。2013年3月衆議院議院運営委員会における所信表明のなかで、黒田総裁は「もし私が総裁に選任されたら、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けやれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと思う」と述べた。そして就任直後の同年4月から「量的・質的金融緩和」を実施し、今日に至っている。

その考え方はまさに、「デフレ脱却、ないしは2%の物価目標の達成が先」=「中央銀行による国債買い入れが先、財政再建は後」というものだ。そして、その後の日本の財政規律の弛緩ぶりは今まさにみてのとおりの状況になっている。

以上は、海外の主要中銀がこれまで展開してきた金融政策運営のごく一部のエピソードにすぎない。日銀を含む主要中銀が、これまでどれほどのリスクをとる金融政策運営を行っているかは、最も端的にはその資産規模の推移に表れる(図表6)。

コロナ危機下にある現時点に至るまで、日銀がいかに他の主要中銀とはかけ離れた過剰なリスク・テイクを行っているのかは、このグラフから一目瞭然だろう。次回は、わが国がこのまま突き進んでいったとき、その先で待ち受ける事態はいかなるものなのかについて考えることとしたい。

関連記事
コロナ禍で自治体の「貯金」が尽きた…間もなく死ぬ街、死なない街
「セックスレスで人生を終えたくない」コロナ離婚を決意した夫の言い分
「日本を外国の経済理論の実験場にしたくない」バラマキを牽制する麻生財務相の信念
「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路
コロナ不況でも会社が絶対に手放ない優秀人材5タイプ