それでもサプリメントが売れる理由

サプリメントの害ばかりを書きましたが例外的に有用な場合もあります。

たとえば、妊娠初期はビタミンB群の一種である葉酸のサプリメントが推奨されています。妊娠初期の胎児に必要な栄養素ですが、通常の食事では不足しがちだからです。他にも、アスリートが効率的に蛋白質を摂取するためのサプリメント、菜食主義など特別な食事を摂っている人にビタミンB12などがあります。

このように一部のものにしかメリットがないサプリメントですが、それでも多くの消費者が買い求める気持ちはよくわかります。

現在健康で将来の不安もない、という方はほとんどいらっしゃらないと思います。身体のどこかに不調があったり、いまはなくても将来病気になる不安があったりするのは普通です。

現代医学は進歩し、治せる病気も増えましたが、漠然とした不調や不安にはあまり対応できていないのが実情です。最近疲れがちだ、めまいがする、腰が痛いといった症状で病院に受診し、採血やCTやレントゲンの検査を受けても異常がなかったというご経験のある方も多いと思います。

「嘘も方便」が通用していた昔は、プラセボ効果を期待してビタミン剤を処方したり、食塩水を点滴していましたが、いまではそんな治療はできません。

十分に時間をかけて患者さんの訴えに耳を傾け、丁寧にご説明し、対症療法を行えばある程度は改善しますが、待合室では次の患者さんが待っているのです。すべての患者さんにご満足いただける医療を提供するのは正直難しいです。

当たり前の努力が健康をつくる

社会制度の面からも、科学的な観点からも、現代医学には限界があります。

そんな中、「一日数粒摂取するだけでアンチエイジング!」などと宣伝されれば、患者さんがそちらに流れるのも無理はないです。ビジネスとして宣伝手法を洗練させてきた業界には勝てません。

ただ、サプリメントはどんなに高価でも効果があるとは限らず、害すらある可能性もあり、費用対効果はあまりよくないことは覚えておいてください。

健康になりたいのならサプリメントには頼らず、バランスのよい食事、適正体重の維持、適度な運動、お酒を飲み過ぎない、たばこを吸っているなら禁煙といった当たり前の対策を無理なく行える方向にコストをかけることを、個人的にはおすすめします。

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