会話が盛り上がるとつい外してしまう人々

それはさておき、ヨーロッパでも日本でも「マスクをしているのに、飛沫が飛びそうな場面に限ってマスクを外す人」が目立ちます。たとえば日本の国会中継を見ていると、椅子に座って黙っている人がマスクをしているのに、立って話している人がマスクを外している姿を時折見かけます。

日本在住のドイツ人男性は、先日「ドイツに住む両親とその友達夫婦」の計4人とZoomで話したそうです。両親だけではなく友達夫婦もいるということで、日本でいう「3密」を心配した男性でしたが、彼がさらに驚いたのは、会話が盛り上がると4人ともマスクを外したことでした。

4人がマスクを外すのを見て男性は画面の前で思わず叫びそうになったとのことですが、きっと気持ちが顔に出てしまったのでしょう。4人は口をそろえて「大丈夫、大丈夫。私たちはいつも(コロナに)気をつけているから」と言ったのだとか。

「盛り上がったときにマスクを外すなんて全然気をつけてないじゃないか!」とツッコミたいところですが、思い当たる人もいるのではないでしょうか。

写真=iStock.com/skynesher
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全体的にはやはり日本人のほうが「マスク慣れ」している気はします。たとえば筆者は友達と外で待ち合わせるとき、公共交通機関を使わずに徒歩で向かうことも多いのですが、人があまりいない道を歩くときはマスクを外して歩いています。そして待ち合わせ場所で友達を見つけると同時にマスクをするのですが、マスクをする筆者を見て相手(日本人)がホッとするのが分かるのです。

抜けきらない「マスクをするのは相手に失礼」という感覚

筆者がマスクを着用するのを見てホッとした顔をするのは主に日本人で、相手がヨーロッパ人の場合はもっと複雑です。

何カ月か前、筆者は例によって人通りの少ない道をマスクをしないで歩いていましたが、なんと知り合いのドイツ人男性にバッタリ会ってしまいました。雑談が始まりそうだったので、筆者がマスクをしたら、「え?」という感じの怪訝な顔をされました。

「あなた、マスクをしないで歩いていたのに、僕と会った瞬間にマスクをつけるなんて、僕を感染者だと思っているの?」と言いたげな表情でしたが、そうではないんです。雑談をすると笑ったり声が大きくなったりするので、マスクの着用は「あなた」ではなく「わたし」(筆者)の飛沫が飛ぶことを心配してのことでした。

最近は「人と話すときこそマスクをする」人に対する訝しげな視線は少なくなってきているものの、「マスクは顔が見られないから残念」という感覚は今もヨーロッパ人のほうが日本人よりも強いと思います。

現に前述の「両親とその友達夫婦が盛り上がってマスクを外した」場面では、友達夫婦が「せっかく日本にいるあなたの顔が久しぶりに見られるのだから(日本在住の男性は一人で家にいたためマスクはしていませんでした)、私たちもマスクを外さないとね」と話していたのだとか。

つまりそこには「相手がマスクをしないで顔を見せてくれているのに、自分がマスクで顔の下半分を隠し表情が見えないようにしてしまうのは相手に対して失礼」という感覚があるのでした。