マスクをする目的は、自分の身を守るためではなく、他人に感染を広げないためだ。しかし普段はマスクをしているのに、肝心な会話のときにマスクを外してしまう人がいる。ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏は「マスクをするのは相手に失礼という感覚が抜けきらないのだろう」という――。
日本も欧州も常識になったマスク、しかし…
11月26日、兵庫県市川町の中学校で生徒20人に新型コロナ感染が確認されたというニュースがありました。この学校では全校生徒参加の合唱コンクールが体育館で開かれ、集団感染が起きたクラスの生徒はほとんどがマスクをせずに歌っていたということです。
現在、日本でも海外でも「マスクを着用すること」は常識です。それなのに「普段は当たり前のようにマスクをする習慣のある人」がなぜよりによって飛沫が飛ぶ「合唱」や「会話」、「くしゃみ」などの際にマスクを外してしまうのでしょうか。今回はそんな不思議な現象について考えてみたいと思います。
今年の春先にはマスクというものに懐疑的だったWHO=世界保健機構も現在は180度方向転換をし、ヨーロッパ各地でのロックダウンについて「もしもマスク着用率が95%になれば外出制限は必要なくなる」としており、ヨーロッパの人々にマスクの着用を徹底するよう呼びかけています。
ドイツなどではマスクの着用が義務づけられている一方で、ヨーロッパ全体でみると着用率が60%以下であり、全員がマスクをするようになるまで、まだまだ課題が多いです。
コロナ禍になる前からマスクを着用する人が多かった日本とは違い、コロナ禍の前のヨーロッパにおいては「マスクを着用すること」は異様なこと、不審なこととして扱われていました。そんなところにもマスク着用がなかなか定着しない理由がありそうです。