ツイッターやインスタグラムでの「コカ・コーラ」ネタを収集把握

さらにAIは、ソーシャルメディアを解析して、「顧客がいつ、どこで、どうやって製品を消費するか」や「特定の地域で人気の製品はどれか」を知るのにも活用されている。

いまや、消費者の9割以上がソーシャルメディア・コンテンツを参考に購入の意思決定をしている。そうした現状を考えれば(※3)、数十億の顧客がフェイスブックやツイッターやインスタグラムなどで、コカ・コーラ製品についてどんな話をし、どんな情報をやりとりしているかを把握することは、マーケティング戦略にとって不可欠だ。

そこでコカ・コーラは、12万を超えるソーシャル・コンテンツとのエンゲージメントを分析し、顧客のデモグラフィック情報や顧客行動、製品を話題にしている傾向についての理解を深めた。

写真=iStock.com/Rich Legg
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そのほかに、ロイヤルティ・プログラムのための確実な購入証明にもAIが用いられている。商品を買ったことを証明するのに、ボトルキャップに印字された14桁の製品コードをウェブサイトやアプリに手動で入力しなければならなかったときは、そのわずらわしさから、当然ながらプログラムの普及は進まなかった。

プログラムの参加者を増やそうとコカ・コーラは、「スマートフォンで1枚写真を撮れば購入が証明できる」画像認識技術の開発に取り組んだのだ。

アイスティーの写真を見つけたら、アイスティーの広告を

コカ・コーラは、自社の製品がソーシャルメディアでどんなふうに取りあげられ、シェアされているかを知るために、37の「ソーシャル・センター」を設け、データを集め、分析をして知見を抽出している。目指すのは、ポジティブなエンゲージメントの創出に効果的なコンテンツをより多く作成することだ。

バーナード・マー、マット・ワード、安藤貴子訳『世界のトップ企業50はAIをどのように活用しているのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

以前なら、そうしたコンテンツをつくるのは経験豊富な人間の仕事だった。けれどもコカ・コーラは、ソーシャルメディアのデータをもとに、広告やソーシャル・コンテンツを製作できる自動システムの開発を積極的に検討している(※4)

さらにコカ・コーラは、「潜在顧客の可能性をうかがわせるような写真」をソーシャルメディアで共有しているユーザのターゲティングを行っている。具体的な例をあげると、画像認識アルゴリズムが、「おいしそうなアイスティーの写真」を見つけたら、それらを投稿した人々がアクセスするウェブサイトやアプリに、自社ブランドのアイスティーの広告が表示されるようにしたのだ(※5)

特定の個人がアイスティーを好み、友人と画像を共有するソーシャルメディアのアクティブ・ユーザの可能性があるとアルゴリズムが判断したなら、その人たちを広告のターゲットにすれば、広告費を有効活用できる確率が高い。