これを国別に見たのが図表5です。日本では、他国にくらべて国際共同研究の効果が低いことがわかります。そもそも国際共同研究をあまりしていないうえに、したとしても海外の研究パートナーから十分に学ぶことができていないのです。その結果、日本では技術革新力が低下してしまったのです。

それにくらべて、中国では国際共同研究の効果が非常に大きく、活発に国際共同研究を行うことで貪欲に知識を吸収していったことがわかります。たとえば、中国のIT大手ファーウェイ社は、現在超高速で超大容量の通信を可能にする5GなどのIT技術などで世界の最先端の技術を持つ企業です。

ファーウェイは、ボーダフォンなどの世界的IT企業、ジャパンディスプレイなどのサプライヤー、ケンブリッジ大学などの世界のトップ大学との共同研究を積極的に行うことで、最先端の技術を獲得してきたのです。

「オープンイノベーション」の取り組みを強化せよ

前述のバートが開発した指標を使うと、共同研究相手が多様でさまざまな企業をつなぐ役割を持った企業ほど、特許の被引用数が多いこともわかりました。

戸堂康之『なぜ「よそ者」とつながることが最強なのか』(プレジデント社)

つまり、図表1の9番さんのように多様な共同研究ネットワークを持った企業の技術革新力が大きいのです。しかも、ネットワークの多様性といっても、国外企業との多様性のほうが、国内企業との多様性よりも、技術革新に及ぼす効果は圧倒的に大きいのです。この海外企業との多様なネットワークが日本には欠けています。

共同研究の重要性は、「オープンイノベーション」という概念にも表れています。オープンイノベーションとはカリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウが提唱したので、自前主義ではなく、広く他社や大学などと連携することでより高度なイノベーションが可能になるというものです。

技術がより複雑になると、一社ではなかなか広い技術分野をカバーしきれなくなります。ですから、近年になってオープンイノベーションはますます重要になってきています。

たとえば自動車産業では、自動運転の普及を見据えて、エンジンや車体を開発するための知識だけではなく、人工知能(AI)による自動運転を可能にするためのビッグ・データの処理技術が必須となってきています。

そのため、トヨタ自動車はスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学など世界のトップ大学と連携研究センターを設立しました。IHI社はシリコンバレーに拠点を設け、スタートアップ企業と連携してAIを利用した荷下ろし作業ロボットを開発しています。

ただし、チェスブロウはシリコンバレーに研究所を持つ日本企業を調査して、そのすべてのケースで「シリコンバレーの研究所では、業界をリードできる技術を見つけられるが、それを日本に持ち帰ると死んでしまう」と喝破しています。日本の企業は、「よそ者」とつながっても、多様性を許容できずにその知識をうまく活用できていないのです。

ですから、今後の日本企業には、企業の垣根を越えた連携、特に海外の企業や大学との多様な連携を拡大しつつ、よそ者の知識を受け入れてイノベーションに結び付ける度量を持つことが求められています。

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