AIとクラウドを用いて自分自身と対話する

異質な考えに接するためのもう1つの方法は、講義をすること、あるいは研究会のような集まりで発表することです。ここでの質問から、新しい発想が出てきます。

野口悠紀雄『書くことについて』(角川新書)

私は、新型コロナウイルスの感染拡大で集会ができなくなるまで、毎月1回、特別講義と称して公開講義を行なってきたのですが、この大きな目的は質問を出してもらうことでした。あるいは、ブレインストーミングを行なって自分の考えを出し、それに対して質問をしてもらうことが考えられます。能力の高い人たちとのブレインストーミングなら、多くを期待することができます。

対話のメモを見直すことも有用です。他の人の考えに接すれば質問が出てきます。こうしたメモには、手書きのものが多いでしょう。これらは、写真に撮り、データベース化します。自分のメモを後から見ることは、しばしば有用です。状況が変わってその問題を新しい観点から、つまり、別人のような視点で、見ることができるからです。

何週間も前のメモを見て、「こんなによいことを考えていたのか!」と自分で感心することもあります。そうしたものが見つかると、貴重な玉手箱を持っているような気持ちになります。

ここで提案しているシステムは、昔から作家が書いていた「創作ノート」と同じものですが、AI(音声入力)とクラウド管理(グーグルドキュメント)によって、はるかに強力な仕組みになっているのです。これは「自分自身との対話」です。これはグーグルドキュメントのコメント機能の活用で進められます。

疑問を持ち続けることが大切

私は質問をたくさん持っています。私が最も恐れるのは質問がなくなってしまうことですが、当面は恐れることはありません。質問が次々に湧き出してくるからです。仕事を進めていることが、問題を捉えるための最強の方法です。

私は、子供の頃から、疑問を持ち続けてきました。例えば、つぎのようなことです。

分数の割り算は、分子と分母を逆にして掛ければよいのはなぜか? 夜が暗いのはなぜか? 星は無数にあるのだから、不思議なことだ。「宇宙が膨張しているからだ」という答えを知ったのは、ずいぶん後のことです。

なぜメキシコとアメリカの間にはこれほどの豊かさの差があるのか? カリフォルニアに留学していたとき、アメリカの豊かさを見て、毎日のようにそう考えていました。いまに至るまで満足できる答えを見いだせません。