地方小規模大学は危機に強い

大学にブランドを求めるなら別だが、Withコロナ時代に充実した学生生活を送り、しっかり勉強して実力をつけたいのであれば、地方の小規模大学のほうがいい。なぜなら、早々と対面授業を再開し、キャンパスライフも大分元通りになっているからだ。

この格差のもとは、コロナ禍に対する耐性の違いである。実は地方の小規模大学ほど、今回のような危機に強い。逆に大都市の大規模・総合大学ほど、もろいのである。私自身、地方の小規模大学に分類される大学に勤めているので、その違いがよくわかる。

私が勤務する長浜バイオ大学は、滋賀県北部の田園地帯にあって、大学の周りは一面の田んぼである。学生数は、大学院を含めても1100人程度という、ごく小さな規模の大学だ。しかも理系の1学部(3学科)のみという、典型的な単科大学である。

今世紀に入ってからできたので、新設大学の部類に入る。そのため知名度が低く、地元との結びつきもまだ弱い。大学にブランドを求めるひとには、もっとも適さない大学といっていい。

だが後期の授業の大半を、対面で行っている。それだけでなく、3月や4月の時点でも、重要な学校行事ができたし、閉鎖措置が取られてからの動きも迅速だった。そうと意識していたわけではないが、コロナ禍に直面し、危機においては、大都市の総合大学よりも、地方の小規模大学のほうが断然有利であることを身をもって体験した。

感染リスクは10分の1…

地方の最大の強みは、新型コロナの感染リスクが低いことである。3月上旬には日本中がざわつき始めていたが、地方の県では月末になっても感染者がゼロか、せいぜい1桁にすぎなかった。

滋賀県も、3月末時点の感染者はわずか7人だった。そのお陰で、われわれの大学では卒業式を行うことができた。保護者も来賓もいない、30分ほどの短い式典だったが、ともかくも無事に卒業生を送り出せたのはよかった。4月の入学式と、新入生向けのガイダンスもできた。本学では、毎年4月1日に入学式を行っており、今年も同じ日程で実施した。

近隣にある県立大学(学生数2800人)でも、卒業式と入学式が行われた。

しかしそこからあまり離れていない国立大学(学生数3900人)では、卒業式も入学式も中止になった。また県南部には、関西を代表するマンモス大学の、主に理工系学部をまとめた広大なキャンパス(それぞれ数千人の学生を有する)が2つあるが、やはり卒業式も入学式も中止になった。

地方であっても、規模の大きい大学ほどコロナの影響を受けやすく、小さな大学ほど影響が小さかったのである。

その後、地方でも感染者はじわじわと増え続けているが、滋賀県の人口当たりの累積感染者数は東京都の5分の1、われわれの大学周辺に限れば10分の1にとどまっている。

小さい組織は意思決定も行動も速い

小さい組織は、意思決定も、それを行動に移すのも速い。それは企業だけでなく、大学にも当てはまる。

国公立か私立か、文系か理系か医療系かで、教職員数は変わってくるが、一般的な私立大学では、学生数が1000人規模なら教員・職員それぞれ50人程度と見積もってよい。そのくらいの人数なら、お互いの顔と名前が覚えられるし、普段からコミュニケーションが活発で、大規模大学と比べると、会議などで無駄な時間を費やすことが少ない。

また地方の小規模大学の多くは、歴史が浅い新設大学である。伝統がない代わりに、古臭い因習や複雑な人間関係、地元との利害関係などが薄いため、事態に柔軟に対応できる長所を持っている。