2021年度の首都圏の中学受験に異変が起きている。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「ここ数年、大学付属校が人気ですが、今秋の模試の結果、日大、東海大、東洋大といった中堅大学の付属校の志望者が増え、競争が激化するのは必至です」という――。

コロナ禍なのに中学受験が過熱する理由

11月に入り、新型コロナウイルス感染拡大が続いている。真冬になればさらに気温が下がり、乾燥する。コロナだけでなく、インフルエンザにも注意が必要になる。そんな中、2月1日に始まるのが、首都圏の中学入試である。ここ数年、中学入試は「大激戦」と形容できるほど活況を呈している。図表1は2015年度以降の中学受験者数だ。

2月1日(午前入試)私立中学受験者数推移と募集定員(1都3県)
出典=森上教育研究所

受験者数が増加の一途をたどっていることがわかる。とりわけ、今春(2020年度)の中学入試は1都3県の募集定員総数を上回る私立中学受験者数となった。つまり、中学受験は「学校を選ぶ時代」から「学校から選ばれる時代」に突入したということだ。

なぜ、中学入試が激戦になっているのか。

中学受験生たちの「志望校選定」に影響を及ぼしているモノとは

その理由は主に3点ある。3点のうち2点はいまの大学入試のあり方に関係している。

①国の大学入試改革の不透明さに不安を覚えた小学生の保護者が、その「改革」に柔軟に対応しそうな私学を選択する道を選んだ。

②ここ数年、国が大学入学定員を厳格化しており首都圏の私立大学が軒並み難化している。このことが小学生保護者の間で周知された結果、中学入試で大学付属校をターゲットにする家庭が増えた。

③少子化と言われるが、都心の「教育熱の高い」エリアでは児童数が増えている点。

中学受験は「お金」のかかる世界である。中学入試の浮沈は、日本の経済状況と密接な関わりがありそうなものだが、来春2021年度の首都圏中学入試はコロナ禍の影響を受けるのだろうか。

結論から申し上げよう。

2021年度の首都圏中学入試の過熱化は沈静することなく、激戦が続くだろう。だからといって、コロナ禍の影響を受けないわけではない。主として中学受験生たちの「志望校選定」に影響を及ぼしているのだ。それらを分析していこう。