小規模大学は学生とのコミュニケーションが取りやすい

多くの大学が、学科単位で各学年を「クラス」と呼び、教員2人ほどを「クラス担任」として当てがっている。クラス担任は、出席が足りない学生や、成績不振の学生を呼び出して面談し、注意喚起を行ったりしている。

クラスの大きさは、大学の規模によって変わってくる。小規模大学における1クラスの大きさは、30~50人程度である。しかし大規模大学になると、100人を超えることも珍しくない。したがって小規模大学のほうが、クラス担任の目が届きやすく、学生の面倒見が良い傾向がある。

それに小規模大学は、もともと学生数に対する教職員数が多いため、日頃からお互いの距離が近い。クラス担任であろうとなかろうと、自分の学科の、1年生から4年生に至るまでのすべての学生の顔と名前をだいたい覚えている。しかも理系なら実験実習が多く、すべての学生と接する時間が長くなるため、一人ひとりの特徴や個性まで、かなり把握することができる。

大規模大学の学生が直面した「孤独」

ちなみに本学ではクラス担任は置かず、全教員が各学年の学生を数名ずつ受け持ち、定期・不定期の面談を行っている。このやり方のほうが、より親身な指導に適していると思う。また本学では、2年生以上から募集した学生チューターが、1年生と日常的に接し、学生生活や勉学の相談などを受けている。

こうしたサポートは、閉鎖期間中もリモートで継続的に行われていたため、大学から放置されているといった不安や不満を抱く学生は、ほとんどいなかった。さらに授業に関する学生アンケートが行われ、遠隔授業に関する問題点が洗いだされ、改善に役立てられた。

しかし規模の大きい大学では、全学生の動向を把握することが困難なうえに、大学からの状況説明や今後の見通しなどの発表も少なく、孤独感に苛まれる学生が大勢いたようである。

また教員間の連携や調整が取れていないため、遠隔授業で大量のレポートや小テストなどの課題が課せられて、学生たちが消化不良のまま疲弊するといった問題も生じていた。しかしわれわれのような小規模大大学では、そういう問題も起こらなかった。

緊急事態解除後の対応も迅速

5月25日に緊急事態宣言が解除された。そこからの対応も速かった。本学では、解除を受けて6月8日から、学生に学年ごとに登校してもらい、教務上の連絡や、学科単位でのホームルーム、教員との個別面談などを行った。またこの日から、大学の情報実習室など一部のファシリティが使えるようになった。

翌週の6月15日からは、一部の授業で対面式が復活した。すべての学年で、学生たちが週2回程度は通学できるように時間割が工夫された。研究室の活動も再開し、4年生の卒業研究や大学院生の研究も大学で行えるようになった。

本学だけでなく、地方小規模大学は、ほぼ同じ時期に対面授業を再開していた。たとえば滋賀県内では、琵琶湖西岸にある、本学と同規模の2つの私立大学が、6月8日ないし15日から対面授業を一部再開していた。

しかし県立大学では前期はすべてリモートのままで、後期に入ってから対面授業が復活した。国立大学のほうは、いまでもオンライン中心である。またマンモス私大の2つのキャンパスでも、相変わらずオンラインやハイブリッド中心の授業が続いている。

対面授業の再開でも、地方小規模大学のほうが有利であることが、はっきりと示されている。