米中覇権競争の歴史と展望
第二次世界大戦後、パクス・アメリカーナ(覇権国アメリカの下の平和)の時代が続いてきましたが、ご存知のように近い将来には、高度成長を続ける中国が経済力でアメリカを追い抜くと予想されています。
中国は永らく自らを途上国として「韜光養晦」、すなわち爪を隠し、才能を覆い隠し、時期を待つという戦術できました。途上国であるという理由で国際的な責務を逃れ、海外から資本を呼び込み技術移転を促進しました。安物の代名詞であった「中国製」はいつしか品質の証になり、今や世界は中国製のハイテク製品に囲まれています。
しかしそうした控えめな姿勢も、2010年にGDP第2位の日本を追い抜いた頃から変わり始めました。中国は「一帯一路」の経済外交政策でユーラシア大陸の中央部に進出し、海洋では南沙諸島に人口島を建設し、我が国との間では尖閣諸島を牽制しています。またインドとは国境線策定でもめています。
習近平国家主席はいよいよ「中国の夢」として「中華民族の偉大なる復興」を掲げて、これは現在の中国共産党の統治理念ともなっているのです。「台頭する国家は自国の権利を強く意識し、より大きな影響力と敬意を求めるようになる」――。この現代の世界覇権を巡る国際社会の状況はまさに「トゥキュディデスの罠」のケースであり、現代は第一次世界大戦前夜に非常によく似ているといわれるのです。
英国の政治家で哲学者エドマンド・バークは「歴史から学ばぬ者は歴史を繰り返す」と言いました。第一次世界大戦と、戦争に至るまでのドイツ国家の国際社会における行動は、中国が台頭する今こそ学んでおきたい歴史なのです。