16年半にわたってロシア外相を務め、「プーチン外交」を体現してきたセルゲイ・ラブロフ外相(70)が近く退陣するとの未確認情報がロシアで流れている。北方領土問題で強硬姿勢を貫くラブロフ外相が退陣すれば、返還交渉が進展する可能性がある。日本の外務省がひそかに望む「外相交代」はあり得るのか——。
2019年11月22日のG20外相会議/日ロ外相会談を前に握手するロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(左)と茂木敏充外相(名古屋市中区[代表撮影])
写真=時事通信フォト
2019年11月22日のG20外相会議/日ロ外相会談を前に握手するロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(左)と茂木敏充外相(名古屋市中区[代表撮影])

「疲れた外交トップ」のイメージが定着している

ラブロフ外相退陣説は9月以降ロシアのメディアで浮上。ジャーナリストのアンドレイ・カラウロフ氏は、同外相が3月に労働英雄勲章を受けたとし、「通常、閣僚らはこの勲章を受けた後、退陣する」と指摘した。

ロシアの情報サイト「ネズイガリ」も、ラブロフ外相は家庭の事情などで退陣し、プーチン大統領によって上院議員に指名されるとし、後任にはナルイシキン長官が有力だが、ショートリリーフで外交官から選ばれる可能性もあると伝えた。クレムリン人事に詳しい政治評論家のアレクセイ・ベネディクトフ氏は外相交代説に、「可能性は排除できない」とコメントした。外相交代が政権幹部の大型人事につながるとの報道もあった。

ロシアの外交ジャーナリスト、ミハイル・フィシマン氏も「外相交代の噂は10年前からある。ラブロフ氏はあまりに長期間外相を務め、『ロシアの疲れた外交トップ』のイメージが定着してしまった」とし、大統領が外交刷新を図るとの見方を示した。

ただし、一連の報道後もラブロフ外相はアルメニア・アゼルバイジャン紛争の調停など精力的な外交活動を続けている。10月末に新型コロナウイルス感染者と接触したことから自主隔離措置に入ったが、今のところ退陣する気配はみられない。人事でバランスを重視するプーチン大統領も、有力閣僚をなるべく据え置いており、続投説もある。