消去法ではない。最後に地味な「トランプじゃないほう」が残ったワケ
混迷を極めた米大統領選は、前副大統領のジョー・バイデン氏(77)が現職のドナルド・トランプ氏(74)を破ることが決定的になった。
エネルギーや派手さに欠け、「トランプじゃないほう」という消去法で選ばれたにすぎないという考え方もあるが、実は深謀遠慮のコミュニケーション戦略が功を奏したという側面も見逃せない。
声が大きく、自信満々な人の陰になり、注目を集めにくい地味な人でも、「大スター」を破り、主役の座に躍り出ることができた理由は何だったのか。今回は「控え目で、目立つことができない人が成功を収めるためのコミュニケーション戦術」について考えてみたい。
共和党支持者「(トランプの)憎しみや分断を煽るやり方は許せない」
この選挙戦でも、人々の注目はトランプ氏に一点集中した。お騒がせな言動で、メディアの関心を独占し続け、バイデン氏はもう一人の主役どころか、準主役、下手をすれば、主役の引き立て役ぐらいの位置づけだった。確かにバイデン氏は能面のようで、表情に乏しく、熱量はトランプ氏に比べて、明らかに低く、その話を聞き、ワクワクしたり、扇動されたることもない。
マイノリティではない、女性ではない、急進的ではないなど、引き算的に民主党候補として選ばれたかに見えるバイデン氏だが、大統領選でも「トランプではないほうの選択肢」として、勝ちを収めたかのようにも思われるている節がある。新型コロナ対応の失敗や分断を助長する言動などへの激しい怒りと恐怖が多くの有権者を反トランプへと駆り立てたのは事実だ。
アリゾナ州に住む共和党支持者の女性(70)は前回、トランプ氏に投票したが、そのあまりに常識外れの言動に嫌気がさし、今回はバイデン氏を選んだという。「憎しみや分断をあおるやり方を許すわけにはいかなかった」「コロナ対策などに憤りを覚えた。このやり方でアメリカが良くなるとは思えない」と、その「転向」の理由を語っていた。