会社員は傷病手当金が就業不能保険代わりに

会社員には健康保険に「傷病手当金」があるからです。大まかに言うと、欠勤4日目から標準報酬日額の3分の2が最長1年半支給されます。

給付状況を全国健康保険協会のデータで調べてみると、傷病手当金の単年度の給付率は、例年、1%程度です。給付期間の内訳は360日以内の給付が9割近く、541日以上の給付は1万人あたり3人に届きません。

ある保険数理の専門家によると、年度単位では、死亡保険金の給付率が1000人のうち3~4人とのことですから、傷病手当金が541日以上の給付される確率は、死亡保険金より一桁少ないことがわかります。

したがって、会社員は多額のローンを抱えている場合などを除き、傷病手当金が就業不能保険代わりになることが多いかと思います。また、傷病手当金がない自営業者も1年分くらいの生活費を蓄えておくのが現実的な方策ではないでしょうか。

ほかに、一生涯の死亡保障がある「終身保険」が相続対策に有用ですが、本当に必要な人は限られているでしょう。

コロナ禍にあって入院保障は必須か?

保険相談にいらした方々に、このような持論を語ると「コロナ禍にあって入院保障は必須では?」「がんの先進医療には300万円くらいかかるのでは?」といった質問も出ます。そんな時は、ある保険会社で「医療保険」や「がん保険」の商品設計に関わってきた方の言葉を紹介することにしています。

「健康保険が適用される治療を受ける限り、どんな病気でも、個人の医療費負担には上限があります。一般的な収入の人なら、月額9万円程度、高齢者はもっと下がります。それなのに、なぜ、がん・三大疾病など、病名別に商品が存在するのか? 『売れるから』なのかもしれませんが、正直、理解できないんです」

個人負担の上限額を民間の保険で調達すると、保険会社の経費や利益まで負担することになるので、自費で払うのが賢明だというわけです。「先進医療」についても「効力が証明されていない、実験段階の医療ですよ」の一言でした。