写真=市来朋久
保冷バッグについてくるメッセージカード(撮影用にパックに張り付け)。木村さん宅では、子供も読めるように、ダイニングテーブルに置いておく。食材の漢字を覚えるのに役立つこともあるという。

創業者の思いは「大きくて深い課題を解決したい」

「起業するときに考えたのは、『大きくて深い課題』を解決するということでした。オーストラリア人のピーター・シンガーという哲学者の言葉から発想したものです。正直に言えば、食にこだわっていたわけでもありません。今の日本で『大きくて深い課題』は何だろう、と考えたとき、思い当たったのは女性が抱えている問題でした。日本では、法律や権利の面では女性の問題は整備されていますが、文化や慣習の面ではまだまだ解決されていないことが多い。それが顕在化しているのが家事領域です。『家事は女性の仕事』という認識は日本にまだまだ根強く残っているからです」

と言う前島CEOは、自身の母親から、「仕事をしながら子育てや家事をすることが難しく、キャリアをあきらめて今も悔いている」と言われたことがある。そういった経験もあり、家事領域でできることはないか、と考えたという。

「ミールキットや家事代行は、利便性やコストの面で利用しづらい。味でも利便性でも既存の宅食サービスが今一歩届いていない領域があるのではないか、と仮説を立てて、この事業を始めました。そこにCMOの小川がマーケティングやメニュー開発のノウハウを持ち込んでくれて、今のお客様からのご支持につながっています」

実家の母親のように、支えてくれる

ユーザーの木村さんは、「つくりおき.jp」は「実家の母親の存在に似ている」と言う。

「子供がまだ小さくて家事と育児、そして仕事にと全く手が回っていなかったとき、母がやってきて料理を作って助けてくれました。そっと寄り添って支えてくれていたあの感じが、このサービスにはあるんです。誰でもいいから助けてほしい状況で、手を差し伸べてくれる感じ。精神的に支えられ、余裕を与えてくれるんです。私がバタバタせずにリラックスしていると、家族の雰囲気が明るくなった気がします。こんなにいい影響が出るんだなと、あらためて感じています」

木村さんがとくに感動したのが「メッセージカード」だった。料理に関する豆知識や旬の食材の話、ちょっとした気遣いの言葉が書いてあるカラフルで小さなカードが、おかずと一緒に届く。

「これまでの宅配サービスとは違う雰囲気を感じました。作り手の気持ちとか、暖かみを感じるんです。『頑張りすぎなくていいんだよ』と言ってくれている気もします。意見をメニューに反映してくれますし、本当に私たちを見守ってくれるサービスだと感じています」

ユーザーの強い支持を受ける「つくりおき.jp」。今後、どのように展開していくのか、前島CEOに聞いた。

「今後も、大きくて深い課題に取り組んでいきます。おかげさまで、『つくりおき.JP』が支持をいただいているので、エリア拡大を行う予定ですが、食の分野にとどまらず、女性の機会平等につながる事業には、積極的に取り組んでいくつもりです」

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