お国のために働いたことも

ボクシングなどのほかに、日本の「バリツ」という格闘技を身につけている。このバリツが何であるかは「ジュウジュツ(柔術)」であるとか、「ブジュツ(武術)」であるとか諸説あったが、日本の格闘技とステッキ術を融合させた護身術「バーティツ」であるとする説が現在では有力である。

田舎の大地主の家系であり、祖母はフランスの画家ヴェルネの妹。家族に関しては、マイクロフトという兄がいることだけははっきりしている。

大学には行っているが、どこの大学かは不明。在学中に、学友の実家で事件を解決し、職業探偵の道へ進むことを勧められた。ワトスンとベイカー街で共同生活を始める前は、モンタギュー街(大英博物館の東)で探偵の仕事をしていた(『初歩からのシャーロック・ホームズ』巻末の「ホームズが生きたヴィクトリア時代のロンドン地図」を参考にしていただきたい)。

「ノルウェー人探検家シーゲルソン」「バジル船長」などと変名を使ったことがある。探偵業から引退した後は、サセックスの丘陵きゅうりょう隠遁いんとん生活を送り、養蜂をして蜜蜂の研究をしつつ、探偵術に関する執筆もしていた。さらにその後、政府の要請により、お国のために働いたことがある。

世界のどこかで未だに生きている?

死亡については不明。シャーロッキアンは「〈タイムズ〉に死亡記事が載っていないのだから、未だに生きているのだ」と言う。

北原尚彦『初歩からのシャーロック・ホームズ』(中公新書ラクレ)

インヴァネス(ケープ付きコート)を着ているイメージが強いが、原作では地方へ行くときに「旅行用のマント」に身を包んでいたと書かれているだけで、「インヴァネスを着ている」という記述はない。ロンドンの街中ではフロックコート姿が多い。

帽子も同様で、ホームズの帽子というとディアストーカー(鹿撃ち帽)のイメージがあるが、これも原作の本文中では地方行きの際に「耳覆い付きの旅行帽」をかぶったという記述があるだけ。インヴァネスもディアストーカーもイラストで描かれ、それが舞台や映画で強調された末、ホームズのイメージとして定着した。

ホームズ以前にもオーギュスト・デュパン(エドガー・アラン・ポー作)や名探偵ルコック(エミール・ガボリオ作)のように小説中の探偵は存在したけれども、名前だけでなくイメージも含めて、名探偵の代表と言えばシャーロック・ホームズなのである。

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