そして環境が変化すれば、仕事で必要とされている知識やスキルも当然変わってくる。つまり、無駄をしたくないと、いま仕事に使えることばかり勉強するのは効率的どころか、もしかしたらそれまでの努力が一瞬にして灰燼に帰してしまうかもしれない危険な行為なのです。

それより、好奇心に任せてさまざまなことを勉強して知識の裾野を広げておくほうが、将来役に立つ可能性はよっぽど高い。それに、仕事に必要なアイデアやひらめきも、元をただせばどれだけ幅広くものごとを知っているかにかかっているのです。

そういう意味では、広く教養を身につけることを勉強の目的とするのは、きわめて正しいことだといえます。ところが、私の見るかぎり社会科学や地理、歴史といった一般的な教養を、日本のビジネスマンはあまり勉強していない。これは問題です。発想や思考の源泉である教養が弱いというのは、変化に耐えられないと自ら言っているようなものですから、自信がない人は意識して教養を高める努力をしたほうがいいでしょう。

これは自分とは関係がないとか、好きじゃないとかいって自ら壁をつくってしまわずに、何でも興味をもってかじってみればいいのです。

たとえば、私は本を選ぶのにジャンルをあまり気にしません。ふらっと書店に立ち寄り、タイトルと目次を見て、読んでみたいと思ったらそれを買います。これはハウツーものだからと色眼鏡で見るようなこともしない。ハウツーものでも必ずどこかにためになることが書いてあると知っているからです。

また、教養といっても学問的なものにこだわる必要もないでしょう。極端な言い方をすれば、それがパチンコであったとしても、やらないよりは1度でも経験しておいたほうが、よほど教養は高まると私は思います。

ですから、好奇心に蓋をせず、何でもやってみる。これが、明日を変える人間になるための究極の勉強法だといっていいでしょう。

(山口雅之=構成 的野弘路=撮影)