自分の得意な分野や既知のジャンルであっても、聞くことが学びにつながるという点は変わりません。とくに自分と異なる意見は、自分が気づかなかったところをカバーしてくれる可能性が高いわけですから、反対意見こそ勉強になると思って噛みしめるべきです。
これからグローバル化が進んでいくと、それまで当たり前と思っていた以心伝心や、阿吽の呼吸が通じない人たちと一緒に仕事をする機会も増えていきます。そのとき、課題に対するアプローチの仕方や表現方法が自分の中にある常識に当てはまらないといって「これは違う」と拒絶してしまったら、それこそ何も学ぶことはできません。異質を受け入れられるということがグローバル人材の条件だといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、そういう私も十代のころは、人の話など聞かず自己主張ばかりするような少年でした。聞くことを意識しはじめたのは、大学入学の際に父から「もっと社会勉強をしろ」と諭されてからです。これからは教科書よりも社会から多くのことを学ぶようになる、だから他人の意見に耳を傾けられる人間になれと父は言いたかったのだと思います。以来、自分で意識して人の話を聞くようにしているうちに、いつの間にか聞く耳が育ったというわけです。
好奇心に任せて知識の裾野を広げる
自分の仕事やキャリアに直接関係のある勉強をするのは大事なことですが、それ以外のことは無駄だと切り捨ててしまうのは賢明な態度とはいえません。
製薬会社では、新たに発見や合成された物質が製品化に至る確率はわずか1万9700分の1。しかも、運や偶然性に左右されることが非常に多いのです。
しかし、そうかといってただ待っているだけでは、何も起こりません。そのほとんどが無駄になるとわかっていてもなお、来る日も来る日も倦まずたゆまず努力を重ねる。それがあって初めて、1万9700分の1の幸運に巡り合うことができるのです。言葉を換えれば、1万9699の試行錯誤は、患者さんが喜んで使ってくれる新薬を生み出すためにすべて必要なことであって、ひとつとして無駄はないのです。
勉強もこれと同じことだと思います。現代のように環境の変化が激しい時代には、組織にもまた人にも、変わることを躊躇しない柔軟性が要求されます。ちなみに、当社の「明日は変えられる」というスローガンには、こういった意味も含まれています。