「仮装をして大声で騒いでお酒を飲む」というお祭り

「ハロウィーンといえば欧米のもの」と思われがちですが、筆者の出身であるドイツには元々ハロウィーンを祝う習慣はありませんでした。ただ、日本のハロウィーンのように「仮装をして大声で騒いでお酒を飲む」というお祭りがあります。

2月に行われるKarneval(カーニバル、南ドイツではFasching、和:謝肉祭)です。

写真=iStock.com/chris-mueller
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厳しい冬が終わりつつあり春が訪れる前に「冬の悪いもの」(böse Wintergeister)を追い払う目的で、怖いお面などをかぶって仮装しながら鈴や太鼓などを使い、大きな音を出すこのお祭りは伝統あるものです。中世になってからはカトリック教会の影響でカーニバルは「悪魔を追い払う」意味もありました。

近年は伝統をあまり考えず、お酒を飲んでどんちゃん騒ぎをする、という要素が強くなっています。多くの祭りがそうであるように、大変にぎやかで楽しいのですが、今年は例年と異なった事態になりました。そう、新型コロナウイルスです。

2月の「カーニバル」でコロナ感染が広がってしまった

中国やイタリアからの帰国者から始まった感染が、ドイツ国内の各地で開かれる恒例のカーニバルをきっかけに止まらなくなった、というのが一般的な見方です。

3月にドイツで感染が一気に広がりました。震源となった西部ハインスベルクでの感染流行について調べたある研究者は、伝統行事のカーニバルに約400人が参加した後、山火事のごとく地域感染が広がったことを突き止めました。

2月中旬に開かれたカーニバルで、参加者が数時間にわたって酒を飲み、どんちゃん騒ぎをしています。たくさんの人が一緒に踊ったり抱き合ったりし、明らかに「3密」の状態でした。

同じく2月中旬にドイツの北西部にあるノルトライン・ウエストファーレン州の市民会館で行われたカーニバルをきっかけに同州での感染者数が急激に増える事態に発展し、死亡者も確認されました。

その教訓を受け、今回のカーニバルは同じ悲劇を繰り返さないためドイツで早くも対策がとられています。実はドイツのカーニバルシーズンのスタートは「11月11日の11時11分」です。仮装や変装はしないものの、カーニバルのスタートであるこの日にアルコールを飲んでお祭り騒ぎをするのが慣例となっていました。

しかし、ケルンの市長であるHenriette Reker氏は先日会見を開き「11月11日は飲食店以外の場所でのアルコールの販売及び飲酒の禁止」を発表しました。つまり今年はカーニバルのスタートを「路上での乾杯」で祝うことはできなくなりました。