バイデンはどれだけ若者票を取り込めるか

トランプ、ヒラリー、そしてバイデンもベビーブーム世代だ。ミレニアル世代の気持ちが理解できなかったとしても無理はない。だが、トランプはミレニアル世代の支持が得られないのをわかったうえで、時代の流れに取り残された人たちの支持を獲得する選挙に注力したのは間違いない。

バイデンは果たして、ミレニアル世代を取り込むことができるのか?

実は、アメリカの中間選挙だけを見ると、ミレニアル世代の政治的関心が高まっていることがわかる。ピュー研究所の調査によれば、2018年中間選挙における同世代の投票率は、2014年中間選挙から20ポイントも伸びているのだ。さらに、29歳までの若年層の投票率も10ポイント上昇している。そのミレニアル世代の6割はバイデンを支持しており、29歳までの若年層のバイデン支持率は7割近くにも達している。

だが、裏を返せば圧倒的にバイデンを支持する若者層にも3割程度のトランプ支持者がいるということだ。これは若者層の「隠れトランプ」と言っていいだろう。隠れトランプに支えられるトランプに対して、バイデンがどれだけの若者票を取り込めるかが大きな注目ポイントとなるだろう。

「MeToo」が変えたアメリカ社会

差別を助長するようなトランプ政権下で、差別と戦う女性が増えている。これまでセクシュアル・ハラスメントの女性被害者の多くが泣き寝入りしていたとされるが、「MeToo」と率先して被害を告白する女性が増えている。

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2017年10月5日、ニューヨークタイムズが、ハリウッドプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶセクハラを女優の実名入りで告発した。「ワインスタインは自身が手がける映画への出演をぶら下げて女優たちをレイプしてきた」との調査報道を掲載したのである。被害者は80人にものぼった。その被害に遭った女優たちが声をあげたからこそ、悪事が明るみになったのだ。

この記事を契機に「Me Too」運動は世界に広まった。権力者にレイプされながら仕事を失うことを恐れて黙してきた女性たちが次々と声をあげた。

10月10日には雑誌『ニューヨーカー』がさらに詳しくワインスタインの悪事について報じた。その記事の影響はとてつもなかった。朝番組のニュースキャスターのマット・ローアーからニュース界の重鎮チャーリー・ローズのセクハラまでもが明るみに出て解雇された。

人気コメディアンで俳優のビル・コスビーは翌年、禁固3~10年の実刑判決を言い渡された。モーガン・フリーマン、ケビン・スペイシー、ダスティン・ホフマンなどの超大物役者も非難にさらされることとなった。政界にも飛び火し、セクハラが報じられた上院議員や下院議員は辞任に追い込まれるか、選挙で敗れるかして消えていった。

そして、ワインスタインは23年の実刑判決を受けた。