ある時、たまたま高橋くんが棚に並べた製品が1つだけ裏向きに置かれていました。飯田さんはそれを見つけ、高橋くんに「1つ裏向きに置かれていたよ。気をつけてね」と何気なく注意すると、高橋くんは怒った顔つきで「それなら僕は辞めます。僕はみんなが簡単にできることさえもできないので、この仕事は合っていないんです。店長の言う通り、能力がないんです」とアルバイトを辞めてしましました。
飯田さんは高橋くんの言動にあっけにとられ、言葉をかけることさえできませんでした。
正論を言ったつもりが悪者になってしまう
優しく正当なことを伝えただけなのに、高橋くんは怒ってアルバイトを辞めてしまいました。「ロジハラだ!」と口にさえ出しませんでしたが、正論(ロジック)を伝えたことによる人間関係のトラブルには違いありません。
これは、「ひどいものだ」ゲームといいます。ゲームの仕掛け人が、まるで自分が悲劇のヒーローやヒロインのように振る舞い、自分が周りからつらい目にあっていることを伝えるゲームです。
高橋くんは、周りの人からバカにされていると常に思い込んでおり、ある1つの出来事からプツンと堪忍袋の緒が切れてしまったのです。
このゲームの仕掛け人は、アルバイトの高橋くんです。彼は、商品を並べることで褒められたい、「いらっしゃいませ」が言えなくても大丈夫と慰めてほしいと思っていますが、言ってもいないことを言ったり、急に怒ったり、最終的にアルバイトを辞めたなど、あまりに常軌を逸した言動をするので、かえって相手や周りから顰蹙を買います。一見、高橋くんが傷ついているようにも見えますが、ゲームを支配しているのは彼なのです。
ゲームのカモにされた店長の飯田さんは、正しいことを優しく注意しただけなのに急にアルバイトが辞めてしまうといった痛手を負ってしまいました。
このように、優しく注意をしていても、正論(ロジカル)だけで相手に伝えると痛い目を見ることがあるのです。