部下に正しいことを伝えたつもりが、相手から「ロジックハラスメントだ」と非難されるケースがある。臨床心理士の高品孝之氏は「被害者のように振る舞うことで主張を正当化する人がいるが、こうした『ゲーム』のカモにされてはいけない」という。どうすればいいのか――。

※本稿は、高品孝之『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

激怒
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テレビ番組でも話題になった

10月11日に放送されたトーク番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、正論を振りかざし、相手を追い詰めるロジカルハラスメント(以下、ロジハラ)が取り上げられ、話題になりました。その実態は、ちょっとした注意や質問に対して、「そんな正論を言わなくても……」「ロジハラで訴えます!」など、思いもがけないハラスメントになってしまっています。

セクハラやパワハラなど、不快な人間関係のトラブルに悩む人が多い中、最近話題となっているのがロジハラ。当事者にならないためにはどうすればよいのでしょうか?

不快な人間関係は「ゲーム」だった

職場や学校、友人、ご近所、家族……。

人はたった1人で生きることはできず、何かしらの関係性を持って他人と接する必要があります。時には、イヤな人、相性が合わない人などと接しなくてはならないこともあるでしょう。イヤな人と関わらずに生きていくことに越したことはないですが、そう簡単なことではありません。

実は、不快な人間関係には、パターンがあります、これを心理学の1つの理論では、「ゲーム(ゲーム理論)」といいます。

ゲームというと、テレビゲームや、野球やサッカーといったスポーツの試合を思い浮かべると思いますが、人間関係もそれらと同じです。

ルールがあり、ルールに基づいて行われています。イヤな人間関係も実は無意識のうちにルールに基づいて構築されているため、「ゲーム」が生じ、敵対関係が生まれ、不快な関係性になってしまうのです。

では、ロジハラの舞台になるのはどういったゲームなのでしょうか?

実際にあった事例をもとに見ていきましょう。

店長に怒って突然辞めたコンビニ店員

あるコンビニに店長の飯田さん(仮名)とアルバイトの高橋くん(仮名)がいました。高橋くんは、商品を店に並べることは得意で人より素早くキレイにこなします。しかし、どうしても「いらっしゃい」がうまく言えず、いつも「い」にアクセントがついてお客さんやアルバイト仲間に笑われてしまいます。

飯田さんは、高橋くんのことを気にかけ、「いらっしゃいませ」の言い方を指導しますが、どうもうまくいきません。飯田さんも「どうしてこんな簡単なことができないんだろうね?」と首をかしげるしかありません。