2割の人が在宅勤務のためのOA機器を購入

経済的負担も小さくない。在宅勤務が長期化すれば、自宅での通信費や光熱費などの出費が発生する。もちろんランニングコストだけではなく、在宅勤務に必要なパソコンや機材などのイニシャルコストもかかる。損害保険ジャパンの「働き方に関する意識調査」(5月1日~2日)によると、在宅勤務にあたり約2割がOA機器などの物品を購入し、購入金額の平均は6万7550円。また、楽天インサイトの「在宅勤務に関する調査」(4月10日~12日)では在宅勤務で困ったこととして「光熱費や通信費がかさむ」と答えた人が24.5%、女性は37.4%に上る。

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こうした負担の代償として新たに「在宅勤務手当」を支給する企業が報道されているが、それがニュースになるほどだから実態として多いとはいえない。

在宅ワークに関わる経済的負担や職住が一緒になることによる家事などの負担を減らす方法はないのだろうか。

自宅の仕事場はオフィスと一体とみなされる

じつは法律的には雇用労働者であり、かつ会社が自宅を作業場所に指定していれば、オフィスと一体と見なされ、必要な措置を取ることが義務づけられている。労働者の賃金など権利を守る労働基準法(労基法)や健康と安全を守る労働安全衛生法は在宅勤務であっても使用者は遵守しなければならない。よく知られる所定労働時間と残業管理は在宅であっても行う必要があり、残業すれば当然残業代を支払う必要がある。

また、在宅での作業環境については法律に基づき、厚生労働省の「通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(テレワークガイドライン、2018年2月)で具体的に示している。たとえば部屋については「設備の占める容積を除き、10m2以上の空間」、照明は「机上は照度300ルクス以上とする」、椅子は「安定していて、簡単に移動できる。座面の高さを調整できる。肘掛けがある」といった細かい指針を例示している。

在宅ワークに伴う経済的負担をどこまで会社に請求できるか

ではこうした環境の整備や前述した在宅ワークに伴う情報機器の購入や光熱費などの負担はどうなるのか。

労基法では労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、就業規則に規定する必要がある(89条第5号)と定めている。つまり、在宅ワークの経済的負担について使用者と労働者(労働組合など)が協議して決める必要があること、そうした規定がないままに社員に負担を強いることは労基法上許されないということだ。

ところが実態としては、こうした規定を含む「テレワーク規定」がない企業も多く、規定があっても経済的負担をどうするかについての協議もなければ、就業規則に盛り込んでいない企業もある。ある大手企業の人事部長は、この問題について筆者が指摘すると、「労基法の規定はある程度認識していたが、そこまでの余裕はなかった。遅ればせながら労働組合と今後協議していく予定」と言うにとどまる。

社員としては、在宅ワークに伴う費用は当然、会社が負担すべきと堂々と主張するべきだろう。ましてや通勤定期代の支給も廃止され、オフィススペースの削減による机・椅子を撤去する以上、在宅ワークのコスト負担の全額を会社に要求してもおかしくないはずだ。