損得や打算なしで続けることで、よい生き方ができる

「他人」に求めるのではなく、「自分」に求める

「与える」は「求めない」にも繋がる。私が長年、早朝の街路清掃を続けてきて思うのは、掃除は即効性がないので、10年単位で見てようやく成果が見えてくるようなものだということ。だから行いたがる人は皆無だし、たとえ始めても続けられる人はやはりゼロに近い。私のいくつかある日本一のひとつが街の清掃だ。年間360日、700時間。今もなお続けている。

実行している間に損得や打算があっては、だめなのだ。掃除をしても報酬が得られるわけではないし、誰に認められるわけでもない。しかし、損得や打算なしで続けていれば、結果として「徳」が得られる。これは寄付や募金も同じである。見返りを求めずに少しでもできることを行うことで、心が高まり、よい生き方の姿勢が作られていくのである。

私自身は、他人に「何かしてくれ」と求めたり、「これを手に入れたい」といった自分自身の欲は少なかった。ただ、接客する中で「お客様に満足していただこう」という気持ちから自分自身に求めることは多かった。そうしないではいられないから、していたのだ。

他者に求めず、自分に求める。そうすると、無心でやっていけるようになる。そして、それを実行し続けると、少しずつ、とらわれのないよい心になれる。すると、部下に厳しいことを言う時でも、公明正大な気持ちで「悪いことは悪い」と言えるようになるのである。

額にかかわらず、経営者にできることはたくさんある

社会貢献活動を行うことは「企業の義務」である

近年、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が使われるが、企業活動には社会的意義が絶対に必要だ。社会の一員として地域にある以上、社会貢献の姿勢は欠かすことができない。

宗次徳二『独断 宗次流 商いの基本』(プレジデント社)

「あなたの会社が地域にあって幸せです。他の地域の人に自慢ができます」と言われるような会社にするのが経営者の務めだと思う。ココイチには「ぜひ出店してほしい」という要望が非常に多いし、近くにあることを自慢してくださるお客様も多く、それは誇りでもあった。

また、今は経済的格差の拡がりで貧困家庭が増えている。子供が一人で食事をする機会も多い。そういう子供たちに温かい食事を、何より会話を楽しみながらの食事を与えたいと、子ども食堂のような活動が行われているが、どこも一様に運営資金が不足している。子供は宝である。健全に育ってほしい。日頃から“助け合い”の気持ちがあれば、現状を見て見ぬふりをするのではなく、たとえ少額でもそうした活動に企業が資金提供をすることも必要だろう。

経営者は稼いだお金を自分のものだと思わないこと。常に社会に還元することを念頭に置いておくことが大切だ。ビル・ゲイツが資産の大半を寄付して話題になったが、私も「楽器を贈る運動」を続けていて、現在までに2000台近くを寄贈している。「ビル」とまではいかないが「平屋のゲイツ」を目指して、これからも地道な啓発運動を続けていくつもりだ。

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