KNT-CTも苦しい、GoToで各社の業績は6割くらいは復活するか

KNT-CTは近畿日本ツーリストとクラブツーリズムを主体とする旅行会社ですが、やはりとても厳しい状況です。こちらの数字は今年の4~6月(第1四半期)の数字です。一番厳しい状況の時期だけの数字なので、とくに苦境が浮き彫りになっています。

図表3を見てください。まず、売上高ですが、前年同期に比べて97%減少しています。普段なら決して想定できない状況です。そして、営業利益は前年の4~6月が27億円の黒字だったのが、この四半期ではなんと143億円のマイナスです。

資金的には、3月末に173億円あった現預金が6月末には150億円と流出規模は比較的小さいですが、「受取手形及び営業未収金」を79億円回収することで、資金繰りをつけたと考えられます。

現預金に次いで短期的な安全性を表す「流動比率」も悪化しています。3月末に110%と合格ラインだったのが、6月末には95%まで低下しています。この水準は今のところある程度大丈夫な状況だとは思いますが、少し心配な水準に近づいています。

中長期的な安全性を表す「自己資本比率」は3月末に20.1%と低いながらも合格点でした。ところが、6月末には11.1%と危険水域の10%ぎりぎりまで落ちています。このペースで落ち続けると債務超過にもなりかねません。KNT-CTはHIS同様、このままの状況が続けば、何らかの資本増強策などが必要になると考えられます。

以上の数字は、HISについては7月末まで、KNT-CTについては6月末までで、一番厳しい時期の業績を反映している数字です。

GoToキャンペーンが7月22日から始まり、先にも述べたように、10月1日からはそれに東京発着分も加わりました。その効果がどこまで表れるかに旅行業界としては期待するところですが、海外ツアーが全く開催できない現状では、国内旅行による改善はみられるものの、厳しい状況が続くと考えられます。GoToトラベルの活況がしばらく続いても全体的には元の6割程度にでも回復すれば良いほうではないでしょうか。

同様に、飲食業やイベント関連業種も苦境の企業が多く、「GoToイート」や「GoToイベント」への期待は大きいですが、感染拡大防止との兼ね合いから、政府や地方自治体はこれからも難しいかじ取りを迫られることとなりそうです。

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