消費者価格指数でも通信費価格の下げ幅は「他国の半分」

消費者物価指数は、どの国でも作成されているので国際比較が可能である。

そこで図表2に、各国消費者物価指数を使い、通信費の価格指数を総合価格指数で割った通信費の相対価格の推移を掲げた(1996年=1として)。

世界的に通信費の増大が顕著となった1996年以降、当初からそれほど高くはなかったと思われる英国以外の各国では半分(0.5)以下に通信費の価格が相対的に低下している。通信分野における技術革新を通じた価格低下が観察できるのである。これに対して、日本の価格低下は3割減にすぎない。家計の通信費負担が日本の場合特に重たくなっている一因がここにあることは確かであろう。

以上のような客観データを見る限り、家計における通信費負担は、日本の場合、今や、先進国の中で最も重くなっていることは否定しがたい状況となっており、安倍首相(当時)や菅首相の問題提起は、もっともなことだと言わざるを得ないだろう。

図表1と最近の家計調査における通信費の動きを考え合わせると、問題提起がはじまった2016年以降、状況はほとんど改善されておらず、マスコミは公約違反としてもっと政府を非難してもよいと思うのであるが、なぜか追及の手は緩い。

携帯電話代の引き下げが、なぜ政権トップから提起されているか?

最後に、携帯電話代の引き下げが政府首脳から「突然」のように提起され、世間を驚かせている状況についてどう見るか。

食費、医療費、電気代や税金の負担の大きさ、あるいは物価高騰など、普通、家計をめぐる問題は、ジャーナリズムや有識者が問題点を指摘し、野党がそれにこたえる形で政府を追及し、結果として、政策上の課題として取り上げられるに至るものが多い。

にもかかわらず、携帯電話代の負担の重さについては、なぜそういう経路を経ないのか、不思議に思う人も多いのではなかろうか。

「二度目の正直」の2018年、政府寄りとおぼしき報道機関は、「携帯電話料金は国際的に高い」というデータを優先して紹介し、値下げすべきだという政権の主張を後追いする立場があらわれていた。

他方、政府に批判的な報道機関はどうだったか。政権トップから値下げが提起されている事実に対し、消費税引き上げによるマイナス効果を少しでも打ち消すことのできる材料として国政選挙で政権党を有利にするための策略だとする論を張った。また、日本の通信費は必ずしも高いとはいえないというデータを紹介しつつ、民間企業の活動に過剰に介入するのは問題あり、といった主張をしたメディアもあった。