伊藤詩織さんへの書き込みをウェブサービスごとに分析

ネット中傷や炎上という現象は、ウェブサービスによってその現れ方が違う。評論家の荻上チキさん(38)は、ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)に関する約70万件の書き込みを対象にウェブサービスごとに傾向を分析した。

第4章で詳しく触れるが、伊藤さんは2017年、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏から性的暴行を受けたとして実名で被害を告発。

19年12月には山口氏を相手取った東京地裁の民事訴訟で山口氏側に賠償を命じる判決(控訴中)が出たが、ネット上では伊藤さんに対する中傷が多く投稿された。伊藤さんは20年6月8日、ツイッター上で伊藤さんを中傷するようなイラストを投稿したなどとして、漫画家のはすみとしこ氏らに対し損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

荻上さんは20年2月、伊藤さんの弁護団から依頼を受け、訴訟対象とする書き込みを絞り込むため、伊藤さんが性暴力被害を実名で告発した17年までさかのぼり、投稿内容を収集、分析した。

写真=時事通信フォト
ツイッターの投稿で名誉を傷つけられたなどとして漫画家らを提訴し、記者会見するジャーナリストの伊藤詩織さん=2020年6月8日、東京都中央区

「違法性の高い投稿」が多かったツイッター

対象としたのは、ツイッター、フェイスブック、ヤフーのニュースコメント欄、ユーチューブ、各種のまとめサイト、ツイートをまとめた「トゥギャッター」、はてなブックマーク、個人ブログ――など10以上のウェブサービス。

伊藤さんの氏名が出ていなくても、伊藤さんを想起させる「オシリちゃん」「伊●詩織」なども含めて検索して投稿を収集。6月8日の提訴会見時点で確認できた投稿は、肯定的な内容も合わせて少なくとも70万件に上った。

荻上さんらは確認できた投稿のうち、ツイッター、ヤフーコメント欄、匿名掲示板「2ちゃんねる」、ユーチューブについて、批判的な投稿と、違法性の高い投稿の割合をそれぞれ推計で算出した。すると、ツイッターでは、批判的な投稿は全体の10.6%で、「ハニートラップ」や「枕営業」など名誉毀損にあたりうる違法性の高い投稿は4.5%だった。

同様に、ヤフーコメント欄では批判的投稿17%、違法性の高い投稿1.8%、2ちゃんねるでは批判的投稿3.9%、違法性の高い投稿3.7%、ユーチューブでは批判的投稿5.5%、違法性の高い投稿3.6%だった。