強烈なアンチを育てるツイッターの仕組み
ツイッターは、違法性の高い投稿が最も高く、批判的な投稿と合わせた割合も4つのサービスの中で2番目に高かった。荻上さんは、背景に「投稿者のアカウントの継続性」と「投稿の拡散性」があるとみる。
「ツイッターは、投稿がリツイートされることによって投稿者が承認されていくプロセスがある。否定的な書き込みを続け、それがリツイートされ続けることによって投稿者は『承認された』と感じ、攻撃的な言葉にエスカレートしていく。書き続けることによって強烈な『アンチ』が育ってしまう土壌があると感じました」
荻上さんはさらにこう指摘する。
「態度模倣効果とでも言えばいいでしょうか。ツイッターでは『このような振る舞いをとることが政治的レスポンス(反応)として正当なのだ』という態度が伝染する。フォロワー数の多いオピニオンリーダーの影響力も強くあります」
伊藤さんを巡っても、〈枕営業(をしていた)〉や〈伊藤詩織は通名で実は(外国籍の)『尹詩織』だ〉というようなデマや、伊藤さんが性暴力に関して海外メディアの取材に答えた内容が〈日本人に対するヘイトだ〉とする主張など、誹謗中傷やデマの内容は似通っている。
こうした現象に荻上さんは疑問を投げかける。
「ツイッターの拡散性自体が問われます。デマやフェイクニュース、他者の尊厳を傷つけるような言説を拡散させることが社会にとって良い行為なのでしょうか」
炎上参加者は「高年収で役職につく男性」が多い傾向
次に、炎上に参加する人の属性について考えたい。前出の国際大学の山口准教授が2014年の調査をもとに炎上参加者と非参加者の属性を比べたところ、「男性」と「子持ち」という属性に加え、年齢が若い(ただし、調査は20歳以上対象)、世帯年収が高い、ラジオ聴取時間が長い、ソーシャルメディアの利用時間が長い人ほど、そうでない人に比べて炎上に参加する傾向が高くなることが分かった。
さらに16年の調査では、炎上参加者の平均世帯年収(670万円)と非参加者の平均世帯年収(590万円)に80万円の差があった。主任・係長クラス以上の役職についている人は、非参加者では18%なのに対し、参加者では31%を占める。その一方、「無職・主婦・アルバイト・学生」が占める割合は、非参加者で48%だったのに対し、参加者では30%にとどまっている。こうした数字から、どちらかというと生活が安定している人の方が、炎上に参加しやすい傾向が見える。