時代とともに移り変わる「法人買収」のニーズ
法人買収ブローカーを生業として約15年という彼だが、顧客からのニーズは時代とともに移り変わってきたという。
「昔は、儲かってしょうがない経営者が、累積赤字を抱えている企業を買っていたんです。累積赤字がある企業を売上の受け皿とすれば、赤字の繰り越し効果で節税になりますから。ただ、ここ10年くらいで法人税率が低くなってきたことと、そうしたスキームに対する規制がどんどん厳しくなったことで、節税目的での企業買収は下火になってきました。
それとほぼ入れ替わりで出てきた動きが、新規参入者にはハードルが高い許認可や既得権営業を引き継ぐことを目的にした買収です。代表的なものでいえば、産業廃棄物処理業者や店舗型風俗店などに需要があります」
そして新型コロナ後の“新常態”として広がっているのが、例の「持続化給付金目当ての法人買収」というわけだ。
「廃業見込みの法人は、『事業継続の意思』を条件としている持続化給付金の対象外です。しかし、その法人を買収した者に事業継続の意思があれば給付対象となるので、ほかの条件さえクリアであれば大手を振って受給していいはず」
たばこ店も「既得権」を持っている
買収した法人による給付金受給の合法性をそう強調するブローカー氏が手掛ける法人の種類は、多岐に及ぶようだ。
「大きな負債がないことが前提ですが、飲食業者や商店から、ネット販売業者、クリエイターの個人事務所まで、どんな業種でも売り物になる。
意外と見つけやすいのがたばこ店。近年の『たばこ離れ』で街からはほとんど消えましたが、自動販売機だけで営業を続けていたりする。『たばこ小売販売業許可』は、既存のたばこ販売業者から一定距離内の店舗では得られない、いわば『既得権』。近隣にコンビニが出店する際に有償での譲渡を持ち掛けてくることもあるため、店を閉めても法人格を保持しているところも多いんです」
では彼は、身売りを望む法人をどのように見つけ出しているのか。