事業主であれば「新型コロナウイルスの影響を受けた」として持続化給付金を受給できる。この仕組みで給付金を荒稼ぎする手口が広がっている。中内宏昌さん(仮名・49歳)は合計500万円を受給したが、「俺なんて控えめなほう。知り合いだけで、たぶん200件くらいは満額受給している」という——。

※本稿は、奥窪優木『ルポ 新型コロナ詐欺 経済対策200兆円に巣食う正体』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

暗闇の中にいる匿名のハッカー
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「まさかこんなに儲かる日が来るとはね……」

まったく新型コロナの影響を受けていないにもかかわらず、持続化給付金を受給する人々もいる。

中内宏昌さん(仮名・49歳)もコロナショックとは無縁なのに、限度額200万円を大きく上回る金額の受給に成功したという。

「過去にやっていた事業のためにつくったペーパーカンパニーが2社あったんだよ。でもここ数年はまったく使っていなくて、5年前に休眠届を出していた。廃業の手続きをするのが面倒くさくて放置していたんだけど、まさかこんなに儲かる日が来るとはね……」

筆者が彼と初めて会ったのは、2012年夏の香港だった。東日本大震災から約1年ちょっと、民主党政権下で超円高が続いていた。そうしたなか、香港の金融の中心地で超高層ビルが立ち並ぶ「中環」(セントラル)にある世界最大級のメガバンク・HSBC本社ビルには、海外に資産を逃がす資産フライトブームに乗って海外銀行口座を開設しようとやって来た日本人の姿が多くあった。

中内さんは、そんな日本人を香港まで引率して口座開設をサポートするツアーを主催しており、資産フライトブームを追いかけていた筆者は彼に取材をしていたのだ。

ちなみに日本人の海外での口座開設ブームは、同年暮れに自民党に政権交代して円安に進み始めると立ち消えとなり、筆者の中内さんへの取材結果は日の目を見ることなくお蔵入りとなった。