「法人とフリーランスの二重申請」も可能

関係者によると、売上の計上を意図的に先送りしてひと月の売上高を半分以下にしたり、経営者が法人、フリーランスとして二重に申請するなどのケースがあることを把握しているという。

しかし今までのところ、中内さんがすでに受け取ったという給付金について、返還請求がきたという話は聞いていない。

そこで筆者は、「持続化給付金事業コールセンター」に、「法人とフリーランスの二重申請」が可能なのか問い合わせてみた。

すると、電話口の男性オペレーターは「個人事業主として事業収入があり必要書類が揃えられるのなら、法人と両方で受給は可能」と答えた。さらに、「同一人物が代表を務める法人が複数あっても、条件を満たしていればそれぞれで受給可能」との回答も得られた。あくまで別人格の事業者には、それぞれに受給資格があるということになりそうだ。

休眠中の法人が給付金目的で買収されている

「でも、今一番熱いのは法人買収だよ」

ここまで早口で、自分の狡猾さを誇るかのように手口を披露してきた中内さんが声を潜める瞬間があった。

法人買収と聞いた直後に、筆者が連想したのは、ハゲタカファンドなどによる大企業の経営権の乗っ取りだ。筆者は、取材したい内容から話が逸脱しそうなことを危惧していたが、お構いなしに中内さんは続けた。

「廃業寸前とか休眠中とかの法人を買っちゃってさ、それで持続化給付金申請しちゃうらしいんだよ。古い知り合いがブローカーやっててさ、俺も買おうと思ってるんだけど」

持続化給付金の不正受給について、これまでさまざまな手口を取材してきた。しかし、法人を購入して申請の“タマ”にする手は、まったく聞いたことがなかった。筆者は職業柄の好奇心を抑えることができなくなっていた。筆者は中内さんに、そのブローカー氏を紹介してくれるよう頼み込んだ。

「緊急事態宣言」が5月25日に解除されて以降、東京都の1日の新規感染者数が再び3桁に戻った7月の昼間、筆者はよりによって第2波のホットスポットとされていた新宿の喫茶店にいた。中内さん紹介のブローカー氏にお目通りかなうこととなり、面会の場所として指定されたのがそこだったのだ。

「私が取材を受けたのは、やましいことは何一つやっていないからです。私たちのビジネスは完全に合法です」

小雨のなか、少し遅れてやってきた彼は、几帳面な手つきでコウモリ傘を畳み終えると、名刺を差し出しながらそう言った。

中内さんと同年代と思われる彼はヤミ金ルックではなかったが、中年太りとは無縁の体型で、カーキ色のカジュアルスーツを着こなし、カタギとは違う雰囲気があった。

「経営コンサルタント……」

名刺に書かれた肩書を読み上げると、彼は「私の名前を出すのはやめてほしい。手の内を明かしてしまうと同業者から反感を食らうから。狭い世界なんで」と釘を刺すことも忘れなかった。