自民党府議団は意見をまとめられず「自主投票」に
ともに賛成多数で大阪都構想を可決した大阪市議会と大阪府議会での採決の具体的状況を見てみよう。
9月3日の大阪市議会の採決では、大阪維新の会(40人)と方針を変えた公明党(18人)の議長を除く計57人が賛成に回った。これに対し、自民党(19人)と共産党(4人)など計25人が反対した。
各党の意見表明で維新は「二重行政を解消し、豊かな大阪になる」と主張し、自民は「住民サービスが低下する」と訴えた。
一方、8月28日の大阪府議会でも賛成71人、反対15人と賛成多数で可決された。採決に先立って維新と公明の両党は賛成の意見表明を行ったが、自民は反対意見を示せなかった。これまで維新と対決してきた自民党府議団(16人)が大阪都構想への意見をひとつにまとめられず、各議員が自主投票する形を取ったからだ。
結局、府議会でも維新の勢いに自民が負けた。ここでも事態を決定づけたのは政治的思惑だった。
読売社説は「メリットが、いまだ判然としない」と批判
9月4日付の読売新聞の社説は「大阪都構想 住民に効果と展望を提示せよ」との見出しを掲げ、その中盤で大阪都構想を明確にこう批判している。
「問題なのは、府と市の協力体制が着実に進展する中で、大がかりな制度変更を行うメリットが、いまだ判然としないことである」
「メリットが、いまだ判然としない」。沙鴎一歩もそう思う。維新代表の松井氏らの政治姿勢から「府民や市民のため」という決意が強く感じられない。再び行われる住民投票で大阪府民と大阪市民は重い選択を迫られるだけである。
読売社説は指摘する。
「府と市の二重行政を改めようと地域政党・大阪維新の会が推進しているもので、15年の住民投票では否決された。効果が見通せず、住民サービス低下の懸念が拭えなかったことが要因と言えよう」
「新たな制度案は、府・市の協議会で3年間議論し、作成された。前回案から区割りを見直し、財政の均衡を図った。現行庁舎の活用など、移行コストも縮減し、府と区で毎年度、財政を検証する仕組みを導入する方針だ」
前回の案に比べて今回可決された案によって住民サービスは向上するのだろうか。読売社説のその答えが前述した「メリットが、いまだ判然としない」である。